こよなう心寄せきこ 139 ★☆☆
原文 読み 意味 桐壺第9章13/源氏物語
こよなう心寄せきこえたまへれば 弘徽殿の女御 またこの宮とも御仲そばそばしきゆゑ うち添へて もとよりの憎さも立ち出でて ものしと思したり
こよなう/こころ-よせ/きこエ/たまへ/れ/ば こうきでん-の-にようご また/この/みや/と/も/おほむ-なか/そばそばしき/ゆゑ うち-そへ/て もとより/の/にくさ/も/たち-いで/て ものし/と/おぼし/たり
若宮があまりに藤壺の宮に心をお寄せになるので、弘徽殿の女御は、若君同様この藤壺の宮とも疎遠であったため、元もとあった亡き方への憎しみも蘇り、不快だとお思いになる。
桐壺 注釈 第9章13
こよなう 01-139
他との程度に格段の差があること。
心寄せ 01-139
好意を寄せること。自動詞「心寄す」の連用形。
この宮とも 01-139
若君のみならずこの藤壺の宮とも。
そばそばしき 01-139
かどばっている。とげとげしている。
うち添へて 01-139
光源氏と藤壺の宮二人一緒に。通例「(藤壺の宮と仲が悪いの)に加えて」と解釈するが、「も立ち出でて」と意味が重複する。次の文が、光源氏と藤壺の宮を並べて提示するので、「ものし」の対象も二人「うち添へて」と取るのがよい。
もとよりの憎さ 01-139
生前の桐壺更衣に対して抱いていた憎しみ。
ものし 01-139
「もの」に対する感覚。
附録:耳からの情報処理(語りの対象 & 構造型)
語りの対象:光源氏/弘徽殿の女御/藤壺の宮/光源氏と藤壺の宮/桐壺更衣に対する憎さ
《こよなう心寄せきこえたまへれば》A
若宮があまりに藤壺の宮に心をお寄せになるので、
《弘徽殿の女御 またこの宮とも御仲そばそばしきゆゑ》B
弘徽殿の女御は、若君同様この藤壺の宮とも疎遠であったため、
《うち添へて もとよりの憎さも立ち出でて・ものしと思したり》C・D
元もとあった亡き方への憎しみも蘇り、不快だとお思いになる。
直列型:A<B<C<D:A<B<C<D
A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
※係り受けは主述関係を含む
〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用
大構造(と思したり/四次)& 係り受け
〈[光源氏]〉こよなう心寄せきこえたまへれば 〈弘徽殿の女御〉またこの宮とも御仲そばそばしきゆゑ うち添へて もとよりの〈憎さ〉も立ち出でて ものしと思したり
〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]: 補 /: 挿入 @・@・@・@:分岐
「心寄せきこえたまへれば」→「弘徽殿の女御…と思したり」
「またこの宮とも御仲そばそばしきゆゑ」:語り手の理由説明
「うち添へて」→「ものしと思したり」
「もとよりの憎さも立ち出でて」:語り手による追加説明
助詞の識別/助動詞:
こよなう心寄せきこえたまへれば 弘徽殿の女御 またこの宮とも御仲そばそばしきゆゑ うち添へて もとよりの憎さも立ち出でて ものしと思したり
助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
敬語の識別:
こよなう心寄せきこえたまへれ ば 弘徽殿の女御 またこの宮と も御仲そばそばしきゆゑ うち添へて もとより の憎さも立ち出でて ものしと思したり
尊敬語 謙譲語 丁寧語