かかる折にも ある 026 ★☆☆

2020-09-03★☆☆:語義の洗い直しから01 桐壺

桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第3章03

かかる折にも あるまじき恥もこそと心づかひして 御子をば留めたてまつりて 忍びてぞ出でたまふ

かかる/をり/に/も あるまじき/はぢ/も/こそ/と/こころづかひ/し/て /みこ/を/ば/とどめ/たてまつり/て しのび/て/ぞ/いで/たまふ

そうした折りにも東宮権に障るような不面目が起きてはと案じて、御子を帝のもとにお留め申して、涙をのんで局(つぼね)を後になさるのです。

解釈の決め手

あるまじき恥もこそ:黒不浄

「かかる折りにも」とあるので、普段から案じていたことである。それは、東宮候補として、御子を連れて帰る場合と残す場合とでは、どちらが有利に働くかという問題。心情としては連れて帰りたいが、そうなれば死穢にあい、東宮候補としてマイナスとなろう、御子のいない間に、弘徽殿の女御は帝に働きかけるに違いない。まして帝の目の届かない場所となると、命さえ保証の限りではない。「恥」とは光源氏の体面を傷つけることであり、里に連れ帰って犬死させたのでは弘徽殿の女御たちの物笑いの種である。家の大事として体面を保つためにも、宮中に御子を残す選択しかなかったのだ。結果から見れば、桐壺更衣は間もなく亡くなり、光源氏は規則として宮中を去ることになる。しかし、母が亡くなる現場に居合わせた場合と、亡くなってから規則に従い里で母の喪に服すことと、死穢の程度は格段に違ったことと思われる。

忍びて

どの注もこっそりとと訳すが、輦車の宣旨まで出て行列をつくって出てゆくのに、こっそりとは無理な話である。ここの「忍ぶ」は一人息子を宮中に置き去りにし、長く過ごした帝とも別れ、死を覚悟して出て行くことに対して、涙をのんで、耐え忍んでの意味。そうした気持ちを語り手が同情しているから強調の「ぞ」が使われているのだ。なお、今、光の君を置いて出ようとしているのは桐壺の局からである。宮中から出るのはまだ先の話。この後、「御息所(御子の母)」から「女」に戻り、歌を詠み別れの場面を演じる、いわば濡れ場が別れに必要であり、その場面に子供は適さない。

語りの対象&構造型

対象:御息所(桐壺更衣)光源氏

かかる折にも・ あるまじき恥もこそ と・心づかひして》A・B・C
そうした折りにも東宮権に障るような不面目が起きてはと案じて、


御子 をば留めたてまつりて 忍びてぞ出でたまふ》D
御子を帝のもとにお留め申して、涙をのんで局(つぼね)を後になさるのです。

分岐型:A<(B<)C<D:A<C<D、B<C

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

情報の階層&係り受け

構文:をば留めたてまつりて忍びてぞ出でたまふ/二次

〈[御息所]〉かかる折にも あるまじき恥もこそと 心づかひして 御子をば留めたてまつりて 忍びてぞ出でたまふ

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

附録

助詞の識別

かかる折  あるまじきもこそ 心づかひし 御子 留めたてまつり 忍び 出でたまふ

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の識別

かかる折に も あるまじき恥もこそ と心づかひして 子を ば留めたてまつりて 忍びて ぞ出でたまふ

尊敬語 謙譲語 丁寧語