年ごろ馴れ睦びきこ 111
年ごろ馴れ睦びきこえたまひつるを見たてまつり置く悲しびをなむ 原文 読み 意味 桐壺第8章06/源氏物語
年ごろ馴れ睦びきこえたまひつるを 見たてまつり置く悲しびをなむ 返す返すのたまひける
とし-ごろ/なれ-むつび/きこエ/たまひ/つる/を み/たてまつり/おく/かなしび/を/なむ かへすがへす/のたまひ/ける
長年慣れ親しみ申し上げて来られた若宮を、お残し申して行く悲しさを祖母も繰り返し繰り返し口にされたものです。
大構造(をなむ…のたまひける/三次)& 係り受け
〈[母北の方]〉年ごろ馴れ睦びきこえたまひつるを 見たてまつり置く悲しびをなむ 返す返すのたまひける
〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]: 補 /: 挿入 @・@・@・@:分岐
桐壺 注釈 第8章06
見たてまつり置く 01-111
光の君をこの世に残して死出の旅に旅立つこと。従って、この一文の動作主は母君。「つひに亡せたまひぬれば/01-109」は祖母が亡くなった事実を、この文では亡くなる時の模様を描く。時間軸に沿っていないので現代の読者には違和感が生じるかもしれない。この文は前の文と後の文(いずれの主体も若宮)の間に挿話的に入っているだけで、括弧の中に入れて考えるとよい。
助詞の識別/助動詞の識別:
年ごろ馴れ睦びきこえたまひつるを 見たてまつり置く悲しびをなむ 返す返すのたまひける
助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
敬語の識別:
年ごろ馴れ睦びきこえたまひつる を 見たてまつり置く悲しびを なむ 返す返すのたまひける
尊敬語 謙譲語 丁寧語
附録:耳からの情報処理(語りの対象 & 構造型)
語りの対象:母君(光の君の祖母)
《年ごろ馴れ睦びきこえたまひつるを》A
長年慣れ親しみ申し上げて来られた若宮を、
《見たてまつり置く悲しびをなむ返す返すのたまひける》B
お残し申して行く悲しさを祖母も繰り返し繰り返し口にされたものです。
直列型:A<B:A<B
A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
※係り受けは主述関係を含む
〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用