限りあれば さのみ 027 ★☆☆

2020-09-0301 桐壺01章~10章★☆☆:語義の洗い直しから01 桐壺01章~10章,,る・らる

桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第3章04

限りあれば さのみもえ留めさせたまはず 御覧じだに送らぬおぼつかなさを 言ふ方なく思ほさる

かぎり/あれ/ば さ/のみ/も/え/とどめ/させ/たまは/ず ごらんじ/だに/おくら/ぬ/おぼつかなさ/を いふかたなく/おもほさ/る

決まりがあることなので、そう留め置くこともおできになれず、帝は病状を見届けてやれないもどかしさを言葉にできぬほどつらくお悔やみにでした。

解釈の決め手

御覧じだに送らぬ:悲劇的アイロニー

見送りさえしないと解釈されるが、今まさに見送りしているのである。帝自ら更衣の里まで見送るはずもない。病状がどうなるか見届けること。この時点では、帝は病状が重いことは気づきながらも、まだ死を正面からは受け止めようとしていない。更衣への愛情が死を脳裏から締め出し、回復をのみ願っている。更衣の死が心を占めはじめるのは、「いかさまにと思し召し」た時であろう。このあたり、運命を悟った更衣と、運命に気づかない帝とのギャップがドラマを生んでいる。決まりだから別れたというだけなら、ドラマ性は大きく減じるであろう。

桐壺 注釈 第3章04

限り 01-027

限界の意味のほかに規則・定めの意味がある。この場面での規則とは、帝は清浄さを重んじる存在であるので、重病者と長く接触することは陰の気を受けすぎ穢れ(気枯れ)るので、限度があるということ。穢れは死触れだけではない。その前の段階で宮中を去らなければならないのだ。

おぼつかなさ 01-027

「おぼろ」の「おぼ」ではっきりしないを原義とする語。一緒にいない、距離があくなどから生じる、つかめなさ、見通しのなさ。この文脈で考えると、この先の病状がどうなるか見通せないことからくる不安である。死が優勢を占めるなら、絶望はするにしても不明さはなくなる。この語からも、死はまだ十分に意識されているとは言えないことがわかる。

言ふ方なく思ほさる 01-027

「形容詞の連用形+思う」の形。形容詞は思うの内容。言い様がないと思われた。「る」は自発。

語りの対象&構造型

対象:

限りあれば さのみもえ留めさせたまはず》A
決まりがあることなので、そう留め置くこともおできになれず、


御覧じだに送らぬおぼつかなさを 言ふ方なく思ほさる》B
帝は病状を見届けてやれないもどかしさを言葉にできぬほどつらくお悔やみにでした。

直列型:A<B:A<B

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

情報の階層&係り受け

構文:ば…のみもえ留めさせたまはず…を言ふ方なく思ほさる/二次

〈限り〉あれ  〈[帝]〉のみもえ留めさせたまはず 御覧じだに送らぬおぼつかなさ 言ふ方なく思ほさる

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

係り受け&主語述語

「え留めさせたまはず」(連用法)→「言ふ方なく思ほさる」

附録

助詞の識別

限りあれ さのみ え留めさせたまは 御覧じだに送らおぼつかなさ 言ふ方なく思ほさ

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の識別

限りあれば さのみ もえ留めさせたまはず 御覧じだに送らぬおぼつかなさを 言ふ方なく思ほさ

尊敬語 謙譲語 丁寧語