限りあれば さのみ 027 ★☆☆

2021-03-04

原文 読み 意味 桐壺03章04@源氏物語

限りあれば さのみもえ留めさせたまはず 御覧じだに送らぬおぼつかなさを言ふ方なく思ほさる

かぎり/あれ/ば さ/のみ/も/え/とどめ/させ/たまは/ず ごらんじ/だに/おくら/ぬ/おぼつかなさ/を/いふかたなく/おもほさ/る

決まりがあることなので、そう留め置くこともおできになれず、帝は病状を見届けてやれないもどかしさを言葉にできぬほどつらくお悔やみにでした。

文構造&係り受け

主語述語と大構造 を言ふ方なく思ほさる:四次

〈限り〉あれ 〈[帝]〉のみもえ留めさせたまはず 御覧じだに送らぬおぼつかなさ 言ふ方なく思ほさる

機能語と係り受け

限りあれば さのみもえ留めさせたまはず 御覧じだに送らぬおぼつかなさを言ふ方なく思ほさる

  • 限りあれ→さのみもえ留めさせたまはず→御覧じだに送らぬおぼつかなさを言ふ方なく思ほさる

限りあれ さのみえ留めさせたまは 御覧じだに送らおぼつかなさ言ふ方なく思ほさ

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

助詞・助動詞の識別:させ ず ぬ る

  • させ:尊敬・さす・連用形/「させたまふ」:最高敬語
  • :打消・ず・連用形(中止法)/「言ふ方なく思ほさる」に係る連用法でもよい
  • :打消・ず・連体形
  • :自発・る・終止形
敬語の区別:たまふ 御覧ず 思ほす

限りあれば さのみ もえ留めさせたまはず 御覧じだに送らぬおぼつかなさを言ふ方なく思ほさ

尊敬語 謙譲語 丁寧語

古語探訪;失われた意味を求めて

御覧じだに送らぬ 01-027:悲劇的アイロニー

見送りさえしないと解釈されるが、今まさに見送りしているのである。帝自ら更衣の里まで見送るはずもない。病状がどうなるか見届けること。この時点では、帝は病状が重いことは気づきながらも、まだ死を正面からは受け止めようとしていない。更衣への愛情が死を脳裏から締め出し、回復をのみ願っている。更衣の死が心を占めはじめるのは、「いかさまにと思し召し」た時であろう。このあたり、運命を悟った更衣と、運命に気づかない帝とのギャップがドラマを生んでいる。決まりだから別れたというだけなら、ドラマ性は大きく減じるであろう。

限り 01-027

限界の意味のほかに規則・定めの意味がある。この場面での規則とは、帝は清浄さを重んじる存在であるので、重病者と長く接触することは陰の気を受けすぎ穢れ(気枯れ)るので、限度があるということ。穢れは死触れだけではない。その前の段階で宮中を去らなければならないのだ。

おぼつかなさ 01-027

「おぼろ」の「おぼ」ではっきりしないを原義とする語。一緒にいない、距離があくなどから生じる、つかめなさ、見通しのなさ。この文脈で考えると、この先の病状がどうなるか見通せないことからくる不安である。死が優勢を占めるなら、絶望はするにしても不明さはなくなる。この語からも、死はまだ十分に意識されているとは言えないことがわかる。

言ふ方なく思ほさる 01-027

「形容詞の連用形+思う」の形。形容詞は思うの内容。言い様がないと思われた。「る」は自発。

耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉

語りの対象:

直列型:A→B:A→B

限りあれば さのみもえ留めさせたまはず》A
決まりがあることなので、そう留め置くこともおできになれず、


御覧じだに送らぬおぼつかなさを 言ふ方なく思ほさる》B
帝は病状を見届けてやれないもどかしさを言葉にできぬほどつらくお悔やみにでした。

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