いとどしく虫の音 077

2020-09-0701 桐壺01章~10章☆☆☆:特別な問題点はない01 桐壺01章~10章,05 空間/天候・風景・自然・環境,08 物語の構造/歌

桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第6章13

 いとどしく虫の音しげき浅茅生に 露置き添ふる 雲の上人 かごとも聞こえつべくなむ と言はせたまふ

 いとどしく/むし/の/ね/しげき/あさぢふ/に つゆ/おき/そふる くも/の/うへびと かごと/も/きこエ/つ/べく/なむ と/いは/せ/たまふ

エ:や行の「え」

そうでなくても虫が鳴きしきる草深いこの侘しい鄙の宿に ますますもって涙の露を置いてゆく雲の上からの使者よ 愚痴もつい申したくなり、と侍女に返歌を読み上げさせる。

解釈の決め手

かごとも聞こえつべくなむ:言い過ぎたことの反省

先ほど来、心の闇と称して、つい心中をさらけ出し、帝を非難するような言葉になってしまったが、「主上のしかなむ」以下において、帝の使者である命婦には命婦の立場があることを認識させられ、先の訴えはついかごとが口をついたのだと、言葉の調子をトーンダウンさせたい母君の心情が伝わる表現。

言はせたまふ:語られることのない取り次ぎの存在

母君がお付きの者に歌を託し、それを命婦の取り次ぎに伝えた。王朝文学では、位のある人物が何かをする時には、文章に表れていてもいなくても、介添え役を通して行う。「せ」は使役。「たまふ」は母君に対する敬意。

桐壺 注釈 第6章13

露置き添ふる 01-077

あなた(命婦)があかず流した涙が露となり、野分に濡れたこの草深い家に、露を残してお帰りなのですねという応答になっている。

かごと 01-077

愚痴。

語りの対象&構造型

対象:里の様子命婦母君

いとどしく虫の音しげき浅茅生に》A
そうでなくても虫が鳴きしきる草深いこの侘しい鄙の宿に


露置き添ふる 雲の上人》B
ますますもって涙の露を置いてゆく雲の上からの使者よ


かごとも聞こえつべくなむ・と言はせたまふ》 C・D
愚痴もつい申したくなり と侍女に返歌を読み上げさせる。

分岐型・中断型・分配型:A<Bφ、*B+C<D:A<B、*B+C<D

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

情報の階層&係り受け

構文:と言はせたまふ/三次

 いとどしく〈虫の音〉しげき浅茅生 露置き添ふる 雲の上人 〈[母君]〉かごとも聞こえつべくなむ と言はせたまふ

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

「浅茅生」:母君の里


「雲の上人」:勅使である命婦

附録

助詞の識別

いとどしく虫音しげき浅茅生 露置き添ふる 雲上人 かごと聞こえ べく なむ 言はたまふ

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の識別

いとどしく虫の音しげき浅茅生に 露置き添ふる 雲の上人 かごとも聞こえつ べく なむ と言はせたまふ

尊敬語 謙譲語 丁寧語