またある時には え 018 ★☆☆

2020-09-0301 桐壺01章~10章★☆☆:語義の洗い直しから01 桐壺01章~10章,03 衣・食・住・車・内裏・後宮

桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第2章12

またある時には え避らぬ馬道の戸を鎖しこめ こなたかなた心を合はせて はしたなめわづらはせたまふ時も多かり

また/ある/とき/に/は え/さらぬ/めだう/の/と/を/さし-こめ こなた-かなた/こころ/を/あはせ/て はしたなめ/わづらはせ/たまふ/とき/も/おほかり

またある時には、御前へ上がる際避けては通れない馬道の戸を、両側から締め立て、あちらとこちらで示し合せて立ち往生させることも度々でした。

解釈の決め手

馬道:難産

殿舎の中央を貫く板敷きの廊下で、その両端には戸があるのが普通。行くことも戻ることもできないように通せんぼして、帝のもとに行かせない直接行動をしたという意味。これも難産や死産を狙った呪詛であろう。「女の道」参照。

ここがPoint

女の道

馬道は女道と音が通じる。妊娠分娩を阻害し、難産のすえ母子ともに危うくさせる呪いが込められている。単なる通せんぼでは児戯に等しい。藤壺の出産時でさえ、「弘徽殿などのうけはしげにのたまふ(弘徽殿めが神仏に願って呪っている)」と聞いて、ここで死んでは物笑いになるのと気力をふりしぼって出産にこぎつける。光源氏の正妻である葵の上は、賀茂祭での車争いから物の怪に襲われ、難産の末、出産間もなく亡くなってしまう。これらよりずっと格下の桐壺に対する憎悪や呪いは、葵の上や藤壺に対する恨みの比ではなかったのではないか。

桐壺 注釈 第2章12

え避らぬ 01-018

帝のもとへ行くのに避けて通れない。

はしたなめ 01-018

「はしたなむ」の連用形。「はした」な思いを味合わせる。帝のお召しなので引き下がれないし、かと言って前にも進めない状態が「はした」。進むことも下がることもできない塞がった状態。

せたまふ 01-018

更衣に味合わせるの意味。使役+尊敬。

多かり 01-018

和文系の文章では「多かり」が通常の終止形、「多し」は漢文系の文章で用いる。形容詞の「多し」だけは補助活用が助動詞と接続せず、本活用として使われる。「多くあり」の縮約と考えてもよい。

語りの対象&構造型

対象:女御(女御と更衣)

またある時には》A
またある時には、


え避らぬ馬道の戸を鎖しこめ・こなたかなた心を合はせて・はしたなめわづらはせたまふ》B・C・D
御前へ上がる際避けては通れない馬道の戸を、両側から締め立て、あちらとこちらで示し合せて立ち往生させる


時も多かり》E
ことも度々でした。

分岐型:A<B+C+D<E:A<B+C+D<E

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

情報の階層&係り受け

構文:も多かり/二次

またある時には 〈[他の女御]〉え避らぬ馬道の戸を鎖しこめ こなたかなた心を合はせて はしたなめわづらはせたまふ 〈時〉も多かり

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

係り受け&主語述語

「またある時には」:「参う上りたまふにもあまりうちしきる折々は/01-017」に対して「また」


「時も多かり」の「も」:「堪へがたくまさなきこともあり/01-017」の「も」と呼応

附録

助詞の識別

またある時  え避ら馬道鎖しこめ こなたかなた心合はせ はしたなめわづらはたまふ時多かり

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の識別

またある時には え避らぬ馬道の戸を鎖しこめ こなたかなた心を合はせて はしたなめわづらはせたまふ時も多かり

尊敬語 謙譲語 丁寧語