先の世にも御契りや 007
先の世にも御契りや深かりけむ世になく清らなる玉の男御子さへ 原文 読み 意味 桐壺第2章01/源氏物語
先の世にも御契りや深かりけむ 世になく清らなる玉の男御子さへ生まれたまひぬ
さきのよ/に/も/おほむ-ちぎり/や/ふかかり/けむ よ/に/なく/きよら/なる/たま/の/をのこ-みこ/さへ/むまれ/たまひ/ぬ
先の世でも帝とのご縁が深かったのであろうか、この世にない気品のそなわった玉のような御子までお生まれになった。
係り受け&大構造(述部)
助詞に基づく構造分析
先の世にも御契りや深かりけむ 世になく清らなる玉の男御子さへ生まれたまひぬ
助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
- 先の世にも→深かりけむ/この部分は挿入。「や…けむ」が挿入の印。「や」はないことも多い。
助動詞の用法&活用形
- けむ:過去推量・けむ・連体形
- ぬ:完了・ぬ・終止形
敬語の区別:御 たまふ
先の世にも御契りや深かりけむ 世になく清らなる玉の男御子さへ生まれたまひぬ
尊敬語 謙譲語 丁寧語
係り受け&大構造(さへ生まれたまひぬ/一次)
/先の世にも〈御契り〉や深かりけむ/ 世になく清らなる玉の〈男御子〉さへ生まれたまひぬ
〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]: 補 /: 挿入 @・@・@・@:分岐
「先の世にも御契りや深かりけむ」:挿入
桐壺 注釈 第2章01
清らなる 01-007
第一等の美をさす。逆にこの語があてられるの人は、第一等の人と考えてよい。光源氏の美質の一つ。
物語の深部を支える重要語句へのアプローチ
世になく
この世ならぬ。単なる比喩的表現ではなく、実際に比較を絶する様子。それは帝にとって危惧されるものであった。
玉の男御子さへ
「さへ」はあるものに加えてしかじかまでもの意味。通例あるものは省略されるが、何に加えてなのか考えることが望ましい。この場合、宿縁が深かったゆえに起きることから考え、帝からの身分不相応な寵愛である。それだけでも前世からの縁が深いのに、美しい皇子までという含意。
附録:耳からの情報処理(語りの対象 & 構造型)
語りの対象:帝と桐壺更衣/光の君
《先の世にも御契りや深かりけむ》A
先の世でも帝とのご縁が深かったのであろうか、
《世になく清らなる玉の男御子さへ生まれたまひぬ》 B
この世にない気品のそなわった玉のような御子までお生まれになった。
中断型:[A<]B:A、B
A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
※係り受けは主述関係を含む
〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用