御使の行き交ふほど 034 ★☆☆

2020-09-0401 桐壺01章~10章★☆☆:語義の洗い直しから01 桐壺01章~10章,06 時間/時刻・昼夜・季節・時代

桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第3章11

御使の行き交ふほどもなきに なほいぶせさを限りなくのたまはせつるを 夜半うち過ぐるほどになむ絶えはてたまひぬる とて泣き騒げば 御使もいとあへなくて帰り参りぬ

おほむ-つかひ/の/ゆきかふ/ほど/も/なき/に なほ/いぶせさ/を/かぎりなく/のたまはせ/つる/を よなか/うち-すぐる/ほど/に/なむ/たエ/はて/たまひ/ぬる /とて/なき/さわげ/ば おほむ-つかひ/も/いと/あへなく/て/かへり/まゐり/ぬ

エ:や行の「え」

付き添った使者が戻る時間でもないのに気詰まりをとめどなく口になさっておられたところ、夜中少しまわった頃、命が絶えてしまわれたと女房たちが泣き騒ぐので、使者もどうにもならず宮中に戻って来た。

解釈の決め手

絶えはて

亡くなることの婉曲表現として使われていることは明らかだが、一般にはこの意味では使用せず、和歌の中で「たまきはる命絶えぬれ」「玉の緒絶えなば絶えね」などの定型表現として使われるのが普通である。単独の表現としては強すぎる言葉で場面にそぐわない。この表現は先の桐壺更衣の歌「命なりけり」を受けた表現と考えると得心がゆく。歌で歌われたあの命の火もついに消えてしまわれたという感覚。それゆえ先にこの歌を聴いている必要があるので、この表現の主体は、ともに里下がりした更衣付きの女房と考えるのが妥当であろう。

あへなく

ことが決定し、元に戻らない、手の打ちようがない感情。死が確定したことからくる感情。 一縷の望みをかけながら、側で見守れないやり場のなさを感じている帝と、直接話法で桐壺更衣の死を嘆く話し言葉を場面を、一文の中でぶつける点が、ストーリーの急展開を描くのに効果をあげている。このあたりも不自然死を感じさせる。

桐壺 注釈 第3章11

なほ 01-034

「御胸つとふたがりて/01-033」とあり、その状態が続いている。やはり、今更ながらに。

いぶせさ 01-034

出口のない鬱憤が原義。更衣が様子がつかめず、気持ちのもって行き様がない様子を表す。

を 01-034

接続助詞ととってもよいが、詠嘆の終助詞と考えてもよい。

語りの対象&構造型

対象:(帝の)御使桐壺更衣内裏からともに里下がりした桐壺更衣付きの女房

御使の行き交ふほどもなきに・ なほいぶせさを限りなくのたまはせつるを》A・B
付き添った使者が戻る時間でもないのに気詰まりをとめどなく口になさっておられたところ、

夜半うち過ぐるほどになむ絶えはてたまひぬる とて・泣き騒げば》 C・D
夜中少しまわった頃、命が絶えてしまわれた と女房たちが泣き騒ぐので、

御使もいとあへなくて帰り参りぬ》 E
使者もどうにもならず宮中に戻って来た。

分岐型:A<B<(C<)D<E:A<B<D<E、C<D

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

情報の階層&係り受け

構文:ば…も…あへなくて帰り参りぬ/五次

〈御使〉の行き交ふ 〈ほど〉もなき  〈[帝]〉なほいぶせさ限りなくのたまはせつる   〈夜半〉うち過ぐるほどになむ絶えはてたまひぬる とて  〈[家の者]〉泣き騒げ  〈御使〉もいとあへなくて帰り参りぬ

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

係り受け&主語述語

「御使の行き交ふほどもなきに」:(A「主格」のB連体形)

附録

助詞の識別

御使行き交ふほどなき なほいぶせさ限りなくのたまはせつる  夜半うち過ぐるほど なむ絶えはてたまひぬる  泣き騒げ 御使いとあへなく帰り参り

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の識別

使の行き交ふほどもなきに なほいぶせさを限りなくのたまはせつる を 夜半うち過ぐるほどに なむ絶えはてたまひぬる と て泣き騒げば 使もいとあへなくて帰り参り

尊敬語 謙譲語 丁寧語