年ごろうれしく面だ 068
原文 読み 意味 桐壺第06章04@源氏物語
年ごろうれしく面だたしきついでにて立ち寄りたまひしものを かかる御消息にて見たてまつる 返す返すつれなき命にもはべるかな
としごろ/うれしく/おもだたしき/ついで/にて/たちより/たまひ/し/もの/を かかる/おほむ-せうそこ/にて/み/たてまつる かへすがへす/つれなき/いのち/に/も/はべる/かな
年来は喜ばしく晴れがましい機会にお立ち寄りいただきました運命であったものを、このようなご用向で今お目にかかるのは、返す返すもままならぬ命ですこと。
文構造&係り受け 01-068
主述関係に見る文構造(命にもはべるかな:四次)
〈[母君]〉年ごろうれしく面だたしきついでにて〈[命婦]〉立ち寄りたまひしものを かかる御消息にて見たてまつる 返す返すつれなき命にもはべるかな
色分:〈主語〉助詞・述語 [ ]:補充 //挿入 |:休止 @@・@@・@@・@@:分岐
機能語に見る係り受け
年ごろうれしく面だたしきついでにて立ち寄りたまひしものを かかる御消息にて見たてまつる 返す返すつれなき命にもはべるかな
「立ち寄りたまひしものを」→「見たてまつる」(過去の「し」と現在の「つる」の対比)
助詞・助動詞の識別:し に
- し:過去・き・連体形
- に:断定・なり・連用形
年ごろうれしく面だたしきついでにて立ち寄りたまひしものを かかる御消息にて見たてまつる 返す返すつれなき命にもはべるかな
助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
敬語の区別:たまふ 御 たてまつる はべり
年ごろうれしく面だたしきついでにて立ち寄りたまひし もの を かかる御消息にて見たてまつる 返す返すつれなき命に もはべるかな
尊敬語 謙譲語 丁寧語
古語探訪;失われた意味を求めて
つれなき命 01-068:逆順
「つれなし」は連れがないことから生じる感情が原義。娘だけを奪って、私を置き去りにした運命。娘の末期の歌「命なりけり」と呼応する。
面だたしき 01-068
世間に誇れる。帝の寵愛が娘に向かっているなどの報告が命婦からあったのであろう。
かかる御消息 01-068
帝からの娘の死の弔意。
耳でとらえる;立ち現れる〈モノ〉
語りの対象:母君/命婦/帝
《年ごろうれしく面だたしきついでにて立ち寄りたまひしものを》 A
年来は喜ばしく晴れがましい機会にお立ち寄りいただきました運命であったものを、
《かかる御消息にて見たてまつる》B
このようなご用向で今お目にかかるのは、
《返す返すつれなき命にもはべるかな》 C
返す返すもままならぬ命ですこと。
直列型:A<B<C:A<B<C
A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
〈直列型〉<:直進 #:倒置
〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用