主上もしかなむ 072
原文 読み 意味 桐壺06章08@源氏物語
主上もしかなむ
うへ/も/しか/なむ
帝もそうで、
文構造&係り受け
主語述語と大構造 もしかなむ:一次
〈主上〉もしかなむ
色分:〈主語〉助詞・述語 [ ]:補充 //挿入 |:休止 @@・@@・@@・@@:分岐
機能語と係り受け
主上もしかなむ
「主上もしかなむ」「人の契りになむ/01-073」「前の世ゆかしうなむ/01-073」(並列)→「とうち返しつつ/01-073」
助詞・助動詞の識別:φ
主上もしかなむ
助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
敬語の区別:φ
主上もしかなむ
尊敬語 謙譲語 丁寧語
古語探訪;失われた意味を求めて
しかなむ 01-072:命婦の切り返し
「(かへりては)つらくなむ(かしこき御心ざしを思ひたまへられはべる)/01-070」を受ける。後ろに「おぼされぬる」などが省略。帝にしても、こうなってしまわれたことがつらくお感じですの意味で、命婦が母君に切り返す際の切り口上。「帝の代弁」参照。
〈テキスト〉〈語り〉〈文脈〉の背景
帝の代弁 01-072
「うち返し」という表現によくあらわれている通り、個人的な心情に終始する更衣の母と、為政者の立場を伝える勅使の立場の違いがぶつかり合うところにドラマが生まれる。扱っているテーマは更衣の死という暗いものの、手法としては性格喜劇の側面(それぞれ一方的に話すだけで、妥協点は見いだせない)をもつ。次帖、有名な雨夜の品定めも同じである。
「主上もしかなむ」は具体的に何が帝も同じなのかを押さえたい。整理すると、帝も母君と同じように現在つらい思いをしていること。更衣が帝の寵愛ゆえに人の恨みをかったように、帝も更衣への愛ゆえ人の恨みをかったこと。母君が子を思う心の闇に迷っているように、帝も外聞わるいほど頑なになったこと、などである。帝の心情を無理なく母宮に伝えねばならない命婦の立場が、苦しい論理展開によくあらわれている。帝は直接、自分の心情を吐露することができない立ち場にある。従って、この命婦の言葉は、更衣の母への切り返しであると同時に、世論に対する帝の弁明を代理するものにもなっている。帝も追い込まれて今の窮状となっているのであって、自ら進んでこうなったのではないと。これはまた母の歌「荒き風ふせぎし蔭の枯れしより小萩がうへぞ静心なき/01-086」を紡ぎ出す糸口となっている。
耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉
語りの対象:帝
《主上もしかなむ》A
帝もそうで、
直列型:A:A
A→B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
〈直列型〉→:修飾 #:倒置
〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉|:中止法・独立文 //:挿入
〈反復型〉~AX:Aの言換えX ,AB:Aの同格B 〈分配型〉A→B*C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用