引入の大臣の皇女腹 153 ★☆☆

2020-09-14★☆☆:語義の洗い直しから01 桐壺,なり(断),

桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第10章13

引入の大臣の皇女腹に ただ一人かしづきたまふ御女 春宮よりも御けしきあるを 思しわづらふことありける この君に奉らむの御心なりけり

ひきいれ-の-おとど/の/みこ-ばら/に ただ/ひとり/かしづき/たまふ/おほむ-むすめ とうぐう/より/も/み-けしき/ある/を /おぼし-わづらふ/こと/あり/ける この/きみ/に/たてまつら/む/の/み-こころ/なり/けり

引入れの大臣には皇女との間にただ一人慈しんでおられる愛娘がいて、東宮からもご所望がありながら応諾もならず悩んでおられたのは、この君に差し上げようとの思惑があおりだったのです。

解釈の決め手

思しわづらふ:東宮よりも光源氏を婿に選んだ理由

思い悩む。すぐ後に、「この君に奉らむの御心なりけり」と説明される。娘の結婚相手として、東宮よりも光源氏を選んだ根拠はなんだろう。帝の外祖父になることこそが公卿にとって最大の願いであるはずなのに。ひとつには、東宮が対立勢力である右大臣を外祖父にもつので、仮に娘に東宮の子が生まれても、東宮が帝位にいる間は、右大臣方を栄えさせる結果となる。今ひとつの理由としては、「ものの心知りたまふ人はかかる人も世に出でおはするものなりけりとあさましきまで目をおどろかしたまふ(ものの本質を見抜いておられるお方は、こんな方も世に生れて来られるものかと、常軌を超えた相に信じがたいと目を瞠はっておられました)023」とあった。右大臣は光の君の人相に、常識でははかれない将来を感じ取り、この人にかけようとの選択をしたものと思われる。

桐壺 注釈 第10章13

御けしき 01-153

入内させよとの要請。

語りの対象&構造型

対象:左大臣(引入の大臣)左大臣の妻である大宮(帝と同じ后腹、帝の妹とも)葵の上のこと東宮(春宮)光源氏

引入の大臣の 皇女 腹に・ただ一人 かしづきたまふ 御女・ 春宮よりも御けしきある・ 》A・B・C
引入れの大臣には皇女との間にただ一人慈しんでおられる愛娘がいて、東宮からもご所望がありながら


思しわづらふことありける・ この君 に奉らむの御心なりけり》D・E
応諾もならず悩んでおられたのは、この君に差し上げようとの思惑があおりでしたから。

反復型:A<B[,C]<D<E:A<B<D<E、B=C

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

情報の階層&係り受け

構文:の御心なりけり/五次

〈引入の大臣〉の皇女腹ただ一人かしづきたまふ御女 春宮よりも〈御けしき〉ある   思しわづらふ 〈こと〉ありける  この君に奉らむ の御心なりけり

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

「思しわづらふことありける」とその後との関係は明確ではない。連体中止とも考えられるが、意味的にも「御心なりけり」の主語と考えるのがよいと思う。「公事に仕うまつれるおろそかなることもぞ/01-144」も同じ。


※「01-153」「01-154」は元服儀式より前のエピソードの挿入

係り受け&主語述語

「引入の大臣の皇女腹にただ一人かしづきたまふ御女」(「大臣の御女」A+「皇女腹なる御女」B+「ただ一人かしづきたまふ御娘」Cが原型):Aは共通項「御女」が後ろに行って「大臣の…御女」と変化。Bも断定「なり」の連体形が並列(同格)を表す連用形「に」に転じて「皇女腹に…御女」と変化。Cは形は変わらないが、Aとむすびつくことで、「大臣の」が意味上の主語になる。よって連体格であった「の」は主格を表すことになる。/「皇女腹に」の「に」(断定の「なり」の連用形)を連用法と考えると「かしづきたまふ」にかかることになるが、意味上自然ではない。


「かしづきたまふ御女」→「内裏にも御けしき賜はらせたまへりけれ/01-154」


「春宮よりも御けしきあるを思しわづらふことありけるこの君に奉らむの御心なりけり」(挿入):御女の説明


「この君に奉らむの御心なりけり」:春宮の申し出を断ったことに対する、語り手による理由の推測

附録

助詞の識別

引入大臣皇女腹 ただ一人かしづきたまふ御女 春宮より 御けしきある 思しわづらふことありける こ奉ら 御心なり けり

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の識別

引入の大臣の皇女腹に ただ一人かしづきたまふ御女 春宮より もけしきあるを 思しわづらふことありける この君に奉らむ の心なり けり

尊敬語 謙譲語 丁寧語