御子はかくてもいと 036
御子はかくてもいと御覧ぜまほしけれどかかるほどにさぶらひたまふ 原文 読み 意味 桐壺第4章01/源氏物語
御子はかくてもいと御覧ぜまほしけれど かかるほどにさぶらひたまふ例 なきことなれば まかでたまひなむとす
みこ/は/かくて/も/いと/ごらんぜ/まほしけれ/ど かかる/ほど/に/さぶらひ/たまふ/れい なき/こと/なれ/ば まかで/たまひ/な/む/と/す
御子のことはこんな場合でもご覧になっていたいと強くお望みだが、母の喪中に帝のお側にお仕えする前例はないことなので、ご退出の運びとなる。
大構造(ばまかでたまひなむとす/四次)& 係り受け
〈[帝]〉御子はかくてもいと御覧ぜまほしけれど かかるほどにさぶらひたまふ〈例〉 なきことなれば 〈[御子]〉まかでたまひなむとす
〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]: 補 /: 挿入 @・@・@・@:分岐
「さぶらひたまふ例」:「たまふ」は終止形として文を切るテキストもあるが、特に意味がふくらむとも思えない。連体形で「例」を修飾するでいいと思う。
物語の深部を支える重要語句へのアプローチ
まかでたまひなむとす
三才の光源氏に内裏から退こうという意思がないことは以下につづく文より明らかであるから、「む」は意思以外の用法となる。「なむとす」には、近未来が確実視される事柄を表す用法がある。三歳の御子の意思とは無関係に事が推移して行くことを表現していると考えれば、「なむとす」は実に適語と言えよう。
桐壺 注釈 第4章01
御子 01-036
光源氏。
かくても 01-036
こうなっても、母更衣が亡くなっても。
かかるほどに 01-036
母の喪中に。
さぶらひたまふ 01-036
帝に仕える。宮中に出仕する。
例なきこと 01-036
延喜七年に七歳以下は喪に服さずともよくなるので、時代設定はそれ以前ということになるが、歴史上の事実はあくまで小説の道具に過ぎない。
助詞の識別/助動詞の識別:
御子はかくてもいと御覧ぜまほしけれど かかるほどにさぶらひたまふ例 なきことなれば まかでたまひなむとす
助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
敬語の識別:
御子はかくて もいと御覧ぜまほしけれ ど かかるほどにさぶらひたまふ例 なきことなれ ば まかでたまひなむ とす
尊敬語 謙譲語 丁寧語
附録:耳からの情報処理(語りの対象 & 構造型)
語りの対象:光源氏/帝/宮中の慣例
《御子はかくてもいと御覧ぜまほしけれど》 A
御子のことはこんな場合でもご覧になっていたいと強くお望みだが、
《かかるほどにさぶらひたまふ例 なきことなれば・まかでたまひなむとす》 B・C
母の喪中に帝のお側にお仕えする前例はないことなので、ご退出の運びとなる。
直列型:A<B<C:A<B<C
A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
※係り受けは主述関係を含む
〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用