この御子生まれたま 012

2021-01-2601 桐壺01章~10章,07 予言約束・予知神託・名付・夢,なり(断定),べし,めり,

この御子生まれたまひて後はいと心ことに思ほしおきてたれば 原文 読み 意味 桐壺第2章06/源氏物語

この御子生まれたまひて後は いと心ことに思ほしおきてたれば 坊にもようせずはこの御子の居たまふべきなめりと 一の皇子の女御は思し疑へり

この/みこ/うまれ/たまひ/て/のち/は /と/こころ/こと/に/おもほし-おき/て/たれ/ば ばう/に/も/ようせずは/この/みこ/の/ゐ/たまふ/べき/なめり/と いち-の-みこ/の/にようご/は/おぼし-うたがへ/り

この御子がお生れになってからは正妻のように格別の計らいをなされたために、皇太子へもことによると、この御子がお立ちになるやもと第一皇子の母の女御は危惧なさっておられました。

助詞に基づく構造分析

御子生まれたまひ いと心ことに思ほしおきてたれ 坊ようせ御子居たまふべきめり 一皇子女御思し疑へ

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

  • →思ほしおきてたり
  • 思ほしおきてたれ→居たまふべきなめり
  • 坊にもようせずはこの御子の居たまふべきなめり/引用文+「と」→思し疑へり

助動詞の用法&活用形

  • たれ:存続・たり・已然形
  • :打消・ず・連用形/動詞・形容詞の「連用形」+「は」=順接仮定条件(…の場合は)
  • べき:当然・べし・連体形
  • :断定・なり・終止形「なり」の「り」が欠落(大野晋説)/連体形「なる」の「る」の欠落(通行の説)「なめり」「ななり」など
  • めり:推量・めり・終止形/引用文につく「と」は終止形接続
  • :存続・り・終止形

敬語の区別:御 たまふ 思ほしおく 思し疑ふ

この子生まれたまひて後は いと心ことに思ほしおきてたれば 坊にもようせずはこの子の居たまふべきなめりと 一の皇子の女御は思し疑へ

尊敬語 謙譲語 丁寧語

係り受け&大構造(ば…と…は思し疑へり/二次

の〈御子〉生まれたまひて 〈[帝]〉いと心ことに思ほしおきてたれ にもようせずはこの〈御子〉の居たまふべきなめり 一の皇子の〈女御〉は思し疑へり

主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

「この御子生まれたまひて後は」→「いと心ことに思ほしおきてたれば」

桐壺 注釈 第2章06

思ほしおき 01-012

具体的には正妻のように扱うこと。

坊 01-012

皇太子のこと。皇太子の役所を東宮坊といい、転じて坊のみで皇太子をさす。

ようせずは 01-012

悪くすると、ひょっとすると。

この御子 01-012

光の君。

居たまふ 01-012

東宮位におつきになる。

物語の深部を支える重要語句へのアプローチ

心ことに

特別に。具体的には、弘徽殿の女御に以下の疑念を抱かすのであるから、第一夫人(最初に入内した夫人)を差し置いて、正妻扱いをしたと考えられる。なお、正妻はまだ決定されていない。女御の中から正妻が一人ないし二人(皇后と中宮、両者に優劣はない)選ばれることになっている。皇太子が決まれば、公的な手続きを踏んだ上で、自ずとその母親が正妻となる。「心ことに思ほしおく」は「おのづから軽き方にも見えしを/01-011」を受けるので、「思ほしおく」の対象は桐壺更衣であって、御子と考えるのは誤りである。

ここがPoint / 文法用語の説明

分岐その4

「坊にもようせずはこの御子の居たまふべきなめり」は「と…思し疑へり」という表現から弘徽殿の心中語であることがわかる。心中語や会話の前後は一般に分岐が起こる。

附録:耳からの情報処理(語りの対象 & 構造型)

語りの対象:光源氏弘徽殿の女御

この御子生まれたまひて後は・いと心ことに思ほしおきてたれば》A・B
この御子がお生れになってからは妻のごとく格別の計らいをなされたために、


坊にもようせずはこの御子の居たまふべきなめり・と一の皇子の女御は思し疑へり》 C・D
皇太子へもことによると、この御子がお立ちになるやもと第一皇子の母の女御は危惧なさっておられました。

分岐型:A<B<(C<)D:A<B<D、C<D

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用