はかばかしう後見思 070

2020-09-0701 桐壺01章~10章☆☆☆:特別な問題点はない01 桐壺01章~10章,07 予言約束・予知神託・名付・夢,,,なり(断),,べし,めり,る・らる

桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第6章06

はかばかしう後見思ふ人もなき交じらひは なかなかなるべきことと思ひたまへながら ただかの遺言を違へじ とばかりに出だし立てはべりしを 身に余るまでの御心ざしのよろづにかたじけなきに 人げなき恥を隠しつつ交じらひたまふめりつるを 人の嫉み深く積もり 安からぬこと多くなり添ひはべりつるに 横様なるやうにてつひにかくなりはべりぬれば かへりてはつらくなむかしこき御心ざしを思ひたまへられはべる

はかばかしう/うしろみ/おもふ/ひと/も/なき/まじらひ/は なかなか/なる/べき/こと/と/おもひ/たまへ/ながら ただ/かの/ゆいごん/を/たがへ/じ と/ばかり/に/いだし-たて/はべり/し/を み/に/あまる/まで/の/み-こころざし/の/よろづ/に/かたじけなき/に ひとげなき/はぢ/を/かくし/つつ/まじらひ/たまふ/めり/つる/を ひと/の/そねみ/ふかく/つもり やすから/ぬ/こと/おほく/なり/そひ/はべり/つる/に よこさま/なる/やう/にて/つひ/に/かく/なり/はべり/ぬれ/ば かへりて/は/つらく/なむ/かしこき/み-こころざし/を/おもひ/たまへ/られ/はべる

しっかりと後ろ盾する人もない宮中の人まじらいは、かえってあだにもなろうとは存じながら、ただかの遺言に違うまいその一心で、宮中へ出立させましたところ、身に余るまでのご寵愛が万時にもったいなくて、それがために人並にも扱われぬ恥を忍んで宮仕えを続けておられたようですが、人のそねみは重なり積もり、心痛はそれに応じて増すばかりで、尋常ならざる仕業でついにこんなことになってしまわれたうえは、恐れ多いことながらかえってつらくご寵愛が思われてなりません。

解釈の決め手

なかなかなる:貫徹するのは難しいとの予想

中途半端でやるのではなかったとの後悔。ただし、母宮が本心から宮仕えに反対であったかどうかは疑問であり、宮仕えに出した以上は、帝の寵愛を受けることを期待したはずである。今も光の君の存在のみが未来の希望である。

横様なるやう:横死

横死のよう、不自然死のよう、呪詛や毒殺のようなものを想定している風。

桐壺 注釈 第6章06

はかばかしう後見思ふ 01-070

滞りなく物事がはかどるように実際に資力を使って後ろ盾してくれる人。

交じらひ 01-070

宮仕え。

御心ざし 01-070

帝の寵愛。

人げなき 01-070

人並み以下の。

かくなりはべりぬれ 01-070

このようになってしまった、娘が亡くなったこと。

かへりては 01-070

帝の寵愛がかえって裏目にでたこと。

語りの対象&構造型

対象:桐壺更衣母君故大納言他の女御・更衣

はかばかしう後見思ふ人もなき交じらひは・なかなかなるべきこと と思ひたまへながら》A・B
しっかりと後ろ盾する人もない宮中の人まじらいは、かえってあだにもなろうとは存じながら、

ただ かの遺言 を違へじとばかりに・出だし立てはべりしを》C・D
ただかの遺言に違うまいその一心で、宮中へ出立させましたところ、

身に余るまでの 御心ざし のよろづにかたじけなきに・人げなき恥を隠しつつ交じらひたまふめりつるを》E・F
身に余るまでのご寵愛が万時にもったいなくて、それがために人並にも扱われぬ恥を忍んで宮仕えを続けておられたようですが、

人の嫉み 深く積もり安からぬこと多くなり添ひはべりつるに》G
人のそねみは重なり積もり、心痛はそれに応じて増すばかりで、

横様なるやうにてつひにかくなりはべりぬれば》 H
尋常ならざる仕業でついにこんなことになってしまわれたうえは、

かへりてはつらくなむ かしこき御心ざし を思ひたまへられはべる》I
恐れ多いことながらかえってつらくご寵愛が思われてなりません。

分岐型:A<B<(C<)D<(E<F<)G<H<I:A<B<D<G<H<I、C<D、E<F<G

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

情報の階層&係り受け

構文:ば…てはつらくなむ…を思ひたまへられはべる/六次

〈[私=母君]〉 はかばかしう後見思ふ人もなき〈交じらひ〉は なかなかなるべきこと @ 思ひたまへながら ただかの遺言を違へじばかり 出だし立てはべりし  身に余るまでの御心ざしのよろづにかたじけなき 〈[桐壺更衣]〉人げなき恥を隠しつつ交じらひたまふめりつるを  〈人の嫉み〉深く積もり 〈安からぬこと〉多くなり添ひはべりつる  横様なるやうにてつひにかくなりはべりぬれ  かへりてはつらくなむかしこき御心ざしを思ひたまへられはべる

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

「AながらB」:ふたつの行為が同時に起こることだからAとBに主従はなく同色とした(その方が「ただかの遺言を違へじとばかり」のニュアンスが生きる)が、Bを主節としてもよい。

係り受け&主語述語

「はかばかしう後見思ふ人もなき交じらひはなかなかなるべきこと」:母君の心中語


「と思ひたまへながら」→「出だし立てはべりしを」


「御心ざしのよろづにかたじけなき」:A「主格or同格」の+B連体形


「かへりてはつらくなむかしこき御心ざしを思ひたまへられはべる」(倒置):かへりてはかしこき御心ざしをつらくなむ思ひたまへられはべる

附録

助詞の識別

はかばかしう後見思ふ人なき交じらひ なかなかなるべきこと思ひたまへながら ただか遺言違へ  ばかり 出だし立てはべりし 身余るまで 御心ざしよろづにかたじけなき 人げなき恥隠しつつ交じらひたまふめり つる  人嫉み深く積もり 安からこと多くなり添ひはべりつる  横様なるやう つひにかくなりはべりぬれ  かへり つらくなむかしこき御心ざし思ひたまへられはべる

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の識別

はかばかしう後見思ふ人もなき交じらひは なかなかなるべきことと思ひたまへながら ただかの遺言を違へじ と ばかりに出だし立てはべりしを 身に余るまで の心ざしのよろづにかたじけなきに 人げなき恥を隠しつつ交じらひたまふめり つる を 人の嫉み深く積もり 安からぬこと多くなり添ひはべりつる に 横様なるやうに てつひにかくなりはべりぬれ ば かへりて はつらくなむかしこき心ざしを思ひたまへられ はべる

尊敬語 謙譲語 丁寧語