生まれし時より思ふ 069 ★☆☆

2020-09-07★☆☆:語義の洗い直しから01 桐壺,04 公的生活/出世・祝賀・行事,07 予言約束・予知神託・名付・夢,,る・らる

桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第6章05

生まれし時より思ふ心ありし人にて 故大納言いまはとなるまで ただこの人の宮仕への本意 かならず遂げさせたてまつれ 我れ亡くなりぬとて口惜しう思ひくづほるなと 返す返す諌めおかれはべりしかば

うまれ/し/とき/より/おもふ/こころ/あり/し/ひと/にて こ-だいなごん/いまは/と/なる/まで ただ/この/ひと/の/みやづかへ/の/ほい かならず/とげ/させ/たてまつれ われ/なくなり/ぬ/とて/くちをしう/おもひ/くづほる/な/と かへすがへす/いさめ-おか/れ/はべり/しか/ば

生まれた時から望みをかけてきた娘で、父の亡き大納言が今際(いまわ)の際まで、ただこの人を宮仕えへに出す宿願必ず遂げて差し上げよ。私が亡くなったとて不甲斐なく節を曲げてはならないと、返す返す諌めおかれましたから、

解釈の決め手

思ふ心:桐壺の父の野望

娘を宮仕えに出し、帝の寵愛をえて家を復興し、あたうべくば次期帝の外祖父になるという夢。父の野望。

この人の宮仕への本意:桐壺の宿願

「この人」は桐壺更衣。「遂げさせたてまつれ」とあるので、父の思いではない。「宮仕への本意」は、宮仕えにでる宿願でなく、宮仕えを続けて帝の子を儲けたいという宿願である。桐壺は強い個性が見られないので、そうした本意がないようにも思えるが、前世からの契りも深く、決して帝の思いを受けるのみではない。積極的に帝への思いもあるのである。

遂げさせたてまつれ:父の遺言

父の遺言である本意を遂げさせるとは、宮仕えに出すことではなく、宮仕えを続けた結果帝の子を儲ける願いを中途半端に終わらせるなというもの。「させ」は使役で対象は「娘」、「たてまつる」は使役の対象である娘に対する敬意。父の思いではなく、娘の思いを遂げさせるのである。「故大納言の遺言あやまたず宮仕への本意深くものしたりしよろこびは/01-088」とあるのも同じで、桐壺が帝に対する一途な思いに対する返礼。

語りの対象&構造型

対象:桐壺更衣故大納言(桐壺更衣の父君)母君

生まれし時より 思ふ心ありし 人にて》A
生まれた時から望みをかけてきた娘で、


故大納言いまはとなるまで ただ》 B
父の亡き大納言が今際(いまわ)の際まで、


この人の宮仕への本意 かならず遂げさせたてまつれ》 C
ただこの人を宮仕えへに出す宿願必ず遂げて差し上げよ。


我れ亡くなりぬとて 口惜しう思ひくづほるな 》 D
私が亡くなったとて不甲斐なく節を曲げてはならないと、


返す返す諌めおかれはべりしかば》E
返す返す諌めおかれましたから、

分岐型:A<B<(C<D<)E:A<B<E、C<D<E

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

情報の階層&係り受け

構文:まで…と…諌めおかれはべりしか(ば)/四次

〈[桐壺更衣]〉生まれし時より思ふ心ありし人にて 〈故大納言〉 いまはとなる までただ この人の宮仕への本意 かならず遂げさせたてまつれ 〈我れ〉亡くなりぬ とて口惜しう思ひくづほるな  返す返す諌めおかれはべりしか

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

係り受け&主語述語

「故大納言いまはとなるまでただ」→「返す返す諌めおかれはべりしかば」


「諌めおかれはべりしかば」→「出だし立てはべりし/01-070」

附録

助詞の識別

生まれより思ふ心あり  故大納言いまはなるまで ただこ宮仕へ本意 かならず遂げさせたてまつれ 我れ亡くなり 口惜しう思ひくづほる  返す返す諌めおかはべりしか

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の識別

生まれし時より思ふ心ありし人に て 故大納言いまはとなるまで ただこの人の宮仕への本意 かならず遂げさせたてまつれ 我れ亡くなりぬ と て口惜しう思ひくづほるな と 返す返す諌めおか はべりしか ば

尊敬語 謙譲語 丁寧語