際ことに賢くて た 126 ★★☆

2020-09-11★★☆:文の構造を捉え直す01 桐壺,たり(完了),,べし

桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第8章21

際ことに賢くて ただ人にはいとあたらしけれど 親王となりたまひなば 世の疑ひ負ひたまひぬべくものしたまへば 宿曜の賢き道の人に勘へさせたまふにも 同じさまに申せば 源氏になしたてまつるべく 思しおきてたり

きは/ことに/かしこく/て ただうど/に/は/いと/あたらしけれ/ど みこ/と/なり/たまひ/な/ば よ/の/うたがひ/おひ/たまひ/ぬ/べく/ものし/たまへ/ば すくエう/の/かしこき/みち/の/ひと/に/かむがへ/させ/たまふ/に/も おなじ/さま/に/まうせ/ば げんじ/に/なし/たてまつる/べく おぼし-おきて/たり

際立ってご聡明ゆえ、臣下に下すには誠に惜しいが、親王におなりになっては世の疑いを負われるは必定であると(倭相の相人が)進言するので、宿曜におけるその道の達人に判断をおさせになったところ同じように申し上げるので、源氏にして差し上げるのがよかろうとご決心なされた次第。

解釈の決め手

親王となりたまひなば

「ただ人にはいとあたらしけれど」は帝の気持ちだが、ここは「親王になしたてまつりたまひなば」等帝が主体であれば使役が入らねばならないがそうなっていない。客観的立場からの発言であることを考えれば、倭相の相人の進言である。

思しおきてたり:最終決断

心の中で思い定める。存続をあらわす「たり」と接続しているので、「思しおきつ」は動作でなく状態を表す。よって、以前から心に決して秘めてきたことになる。源氏の誕生にはまだ時間があり、語り手は一世源氏を迎えた後の時点から帝の決断を語っているのである。

桐壺 注釈 第8章21

際 01-126

境目。他の人との違いがはっきりと見えること。この場合特に、東宮との違いを言うのであろう。

世の疑ひ 01-126

光の君が第一皇子に取ってかわって東宮になり、帝位につくのではないかという疑い。

ものしたまへ 01-126

「言ふ」の尊敬語。源氏物語では特に高位の人にのみ用いる。

宿曜 01-126

インド流の占いとのこと。

勘へさせたまふにも同じさまに申せ 01-126

倭相の相人の進言同様、同じように申し上げる。「同じさま」は「親王となりたまひなば 世の疑ひ負ひたまひぬべく」を受ける。

源氏 01-126

皇族が臣下にくだった身分のこと。源の姓をうけることから源氏という。

語りの対象&構造型:前を参照

情報の階層&係り受け:前と共通

構文:に…思しおきてたり/一次

〈帝〉かしこき御心 倭相を仰せて  思しよりにける 筋なれ  今までこの君親王にもなさせたまはざりける  相人はまことにかしこかりけり と思して  [御子]無品の親王の 外戚の寄せなきにては漂はさじ わが〈御世〉もいと定めなき  ただ人にて朝廷の〈御後見をする〉なむ 行く先も頼もしげなめること と思し定めて  いよいよ道々の才を習はさせたまふ   〈[御子]〉際ことに賢くて ただ人にはいとあたらしけれ  親王となりたまひな  世の疑ひ負ひたまひぬべく 〈[御子]〉ものしたまへば  〈[帝]〉宿曜の賢き道の人に勘へさせたまふ にも 同じさまに申せば  源氏になしたてまつるべく 思しおきてたり

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 @:分岐

「かしこき御心に」:今回の最終決断(「源氏になしたてまつるべく思しおきてたり」)に対するもの。


「倭相を仰せて」:いつの段階かは不明ながら、高麗の人相見の結論を得て、源氏になす結論を下す前と考えるのが自然。帝の考え→高麗の人相見→倭相の助言→宿曜の助言→源氏になす決断


「思しよりにける筋なれば今までこの君を親王にもなさせたまはざりけるを」:高麗の相人と会う前


「相人はまことにかしこかりけり」:高麗の相人の占いに対する帝の感想


「無品の親王の外戚の寄せなきにては漂はさじわが御世もいと定めなきをただ人にて朝廷の御後見をするなむ行く先も頼もしげなめること」:高麗の相人の占いを受けての帝の決定


「際ことに賢くて」:「いよいよ道々の才を習はさせたまふ」を意味的に受け、道々の学問においても他の公達とは歴然たる違いを示した。


「ものしたまへば」:語り手よる光源氏の説明。

係り受け&主語述語

「かしこき御心に」→「(源氏になしたてまつるべく)思しおきてたり」/倭相を命じるのが「かしこき御心」ではない。意味的には「今までこの君を親王にもなさせたまはざりける」にかけるのがよいが、それでは「倭相を仰せて」のかかる場所がなくなる。係り受けの鉄則は入れ子構造であって、交差はしない。大分岐


「倭相を仰せて」→「いよいよ道々の才を習はさせたまふに」→「(際ことに賢くて…世の疑ひ負ひたまひぬべく)ものしたまへば/01-126」(倭相の答申)。中分岐


「思しよりにける筋なれば今までこの君を親王にもなさせたまはざりけるを」:(過去からの継続、確固たる理由はないものの親王にしてこなかった事実をあげる)


「相人はまことにかしこかりけりと思して」→「と思し定めて」


「無品の親王の外戚の寄せなきにては…行く先も頼もしげなめること」:高麗の相人の占いを受けての今後の決断。小分岐1


「いよいよ道々の才を習はさせたまふ」の後に、河内本・陽明文庫本により接続助詞「に」を補う。「際ことに賢くてただ人にはいとあたらし」は道々の才に対する評価である。ただし、倭相を命じてから占いの結果が出るまで、日数を要しており、その点は、終止形でいったん文を切る方が、時間経過を読み取りやすい。ただ「に」がないと、「倭相を仰せて」→「ものしたまへば」となり、やや接続がわるい。


「いよいよ道々の才を習はさせたまふに」→「ものしたまへば」


「際ことに賢くてただ人にはいとあたらしけれど親王となりたまひなば世の疑ひ負ひたまひぬべく」:「倭相を仰せて/01-125」に対する倭相の答申


「ただ人にはいとあたらしけれど」:「ただ人にて朝廷の御後見をするなむ行く先も頼もしげなめること/01-125」を受ける


「源氏になしたてまつるべく思しおきてたり」:思しよりにける筋(帝の予感)、高麗の相人、倭相、宿曜の道の人の助言を経て、源氏にすることを決定した。この慎重さはそれだけ御子を帝位につかせたかったことの現れであり、御子の将来を心配してのことである。

附録

助詞の識別

際ことに賢く ただ人 いとあたらしけれ 親王なりたまひ  世疑ひ負ひたまひ べくものしたまへ 宿曜賢き道勘へさせたまふ  同じさま申せ 源氏なしたてまつるべく 思しおきてたり

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の識別

際ことに賢くて ただ人にはいとあたらしけれど 親王となりたまひなば 世の疑ひ負ひたまひぬべくものしたまへば 宿曜の賢き道の人に勘へさせたまふにも 同じさまに申せば 源氏になしたてまつるべく 思しおきてたり

尊敬語 謙譲語 丁寧語