御遊びの折々 琴笛 175 ★☆☆

2020-09-15★☆☆:語義の洗い直しから01 桐壺,04 公的生活/出世・祝賀・行事

桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第10章35

御遊びの折々 琴笛の音に聞こえかよひ ほのかなる御声を慰めにて 内裏住みのみ好ましうおぼえたまふ

おほむ-あそび/の/をりをり こと/ふえ/の/ね/に/きこエ/かよひ ほのか/なる/おほむ-こゑ/を/なぐさめ/に/て うちずみ/のみ/このましう/おぼエ/たまふ

エ:や行の「え」

管絃の遊びの折り折りには、藤壺の琴と笛の音を合わせ漏れ聞こえるお声を慰めにして、内裏住みばかり好ましくお思いになった。

解釈の決め手

琴笛の音に聞こえかよひ:通わせあう思いとは

琴は藤壺の宮が、笛は光源氏が演奏する。「聞こえ通ひ」とあるので、互いに楽器のかなでる音を通して、思いを通わせあうのである。思いを通わせ合うとは、当然ながら、通わせ合う「思ひ」がなければならない。これまで光源氏からの一方的なものであったのが、ここで通わせ合ったとは、これ以前に密通がなされたことをうかがわせる。「主上の常に召しまつはせば…幼きほどの心一つにかかりて/01-173」とあり、元服前のこと。「大人になりたまひて後はありしやうに御簾の内にも入れたまはず/01-174」は、元服後のこと。「五六日さぶらひたまひて大殿に二三日など絶え絶えにまかでたまへどただ今は幼き御ほどに罪なく思しなして/01-176」は元服の夜に婿として婚儀を催した後のこと。それなのに「幼き」はひっかかる言い方である。また幼いから罪がないというのも、とってつけた感がある。ここでの罪とは、娘と初夜をふくめて何日か過ごしながら、娘を抱かなかったことをほのめかす。まだ娘と通じていないことが「幼き」であり「罪」なのである。
ここからは想像に過ぎないことを断っておく。光源氏の行動様式として誰も予想しない時こそ最大のチャンスと考える向きがある。藤壺を狙っている光源氏にとって、最大で最後のチャンスは、元服の夜、大臣邸へ通った初夜の朝である。葵の上との婚儀の裏には、藤壺との関係が位相を反転させて描かれているように思えてならない。帝の妻を寝取ることは直接に描けることではない。しかし、それを匂わせなければ物語が真を得ない。この手法はさまざまな形で現れる。たとえば、空蝉との強引な関係は藤壺との密事を想像させるなど。

語りの対象&構造型

対象:光源氏藤壺の宮の声

御遊びの折々 琴笛の音に聞こえかよひ・ ほのかなる御声 を慰めにて》A・B
管絃の遊びの折り折りには、藤壺の琴と笛の音を合わせ漏れ聞こえるお声を慰めにして、


内裏住みのみ好ましうおぼえたまふ》C
内裏住みばかり好ましくお思いになった。

直列型:A<B<C:A<B<C

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

情報の階層&係り受け

構文:を慰めにて…のみ好ましうおぼえたまふ/二次

〈光源氏と藤壺〉御遊びの折々 琴笛の音に聞こえかよひ 〈[光源氏]〉ほのかなる御声を慰めにて 内裏住みのみ好ましうおぼえたまふ

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

附録:助詞・敬語の識別・助動詞

助動詞:

御遊び折々 琴笛聞こえかよひ ほのかなる御声慰め  内裏住みのみ好ましうおぼえたまふ

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語: 聞こゆ たまふ

遊びの折々 琴笛の音に聞こえかよひ ほのかなる声を慰めに て 内裏住みのみ好ましうおぼえたまふ

尊敬語 謙譲語 丁寧語