その年の夏 御息所 024 ★☆☆

2021-02-2401 桐壺01章~10章,,,

原文 読み 意味 桐壺第03章01@源氏物語

その年の夏 御息所はかなき心地にわづらひて まかでなむとしたまふを 暇さらに許させたまはず

その/とし/の/なつ みやすむどころ/はかなき/ここち/に/わづらひ/たまひ/て まかで/な/む/と/し/たまふ/を いとま/さらに/ゆるさ/せ/たまは/ず

その年の夏、御息所は死を予感するほどに病んで里に下がろうとなさるが、帝はいっこうに暇を与えようとなさらない。

文構造&係り受け 01-024

主述関係に見る文構造(を…許させたまはず:二次

その年の夏 〈御息所〉はかなき心地にわづらひて @まかでなむ@としたまふ 〈[帝]〉暇さらに許させたまはず

色分:〈主語〉助詞・述語 [ ]:補充 //挿入 |:休止 @@@@@@@@:分岐

機能語に見る係り受け

その年の夏 御息所はかなき心地にわづらひて まかでなむとしたまふを 暇さらに許させたまはず

  • その年の夏→(御息所はかなき心地にわづらひ→まかでなむ(心内語)としたまふ)+→暇さらに許させたまはず
  • 暇さらに許させたまはず/連用法→(…のみのたまはす/01-025)

「その年の夏」は「わづらひて:A」「まかでなむとしたまふ:B」「許させたまはず:C」のどこに掛けるのがよいだろうか。第一に浮かぶのは、この文の情報の焦点がどこにあるかを確認し、そこに係るのではないかと予想する方法である。すなわち、御息所の病気か、宮中を出ようとしたことか、帝が許さなかったことかのいづれの意味が重要かを考えるのである。すると、息所の病気がこの文の新情報の核であり、ここが重要ポイントのように思える。しかし、文の構造としては、「わづらふ」の情報は接続助詞「て」を通して、「まかでなむとしたまふ」に入り込んでいる。御息所に関する情報はここまでで、接続助詞「を」を通して、次に主節が始まってゆく。つまり、B要素がなければ、AとCの要素はつながりを持てないのである。これを軸語という。
一般に「軸語>キーワード」というルールが成り立つ。
これは「文構造は意味に優先する」ということでもある。残るは、主節であるCに掛けるのがよいか、従属節の締めであるBni掛けるのが良いかの検討になる。「その年の夏」は従属節の冒頭にあり、主節に掛けるのは意味的関連がよほど強くないと難しい。そこで意味を考える。「その年の夏、帝は暇を出すことをお許しにならなかった」なのか、「その年の夏、病気を理由に里帰りをしようとしたが、帝は暇を出すことをお許しにならなかった」なのか。後者と考える方が自然であろう。よって、「その年の夏」は従属節の締め「まかでなむとしたまふ」に掛けるのがよいと判明する。

助詞・助動詞の識別:な む せ ず
  • :強意・ぬ・未然形
  • :意思・む・終止形
  • :尊敬・す・連用形/「せたまふ」:最高敬語
  • :打消・ず・連用形→「…とのみのたまはするに/01-025」

夏 御息所はかなき心地わづらひ まかでなむしたまふ 暇さらに許さたまは

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の区別:御 たまふ せたまふ

その年の夏 息所はかなき心地にわづらひて まかでなむ としたまふを 暇さらに許させたまは

尊敬語 謙譲語 丁寧語

古語探訪;失われた意味を求めて

はかなき心地にわづらひ 01-024:横様なること

ちょっとした病気を得てと解釈されるが、ちょっとした病気で宮廷を後にするとは考えにくいし、間もなく亡くなるのも理に合わない。心地の意味として確かに辞書には病気とあるが、病気の時の心持と考える方が適切である。それまでの長患いでは感じなかった死の不安を、はっきりと感じたから里帰りを決断したのである。宮中で死を迎えることは、忌避されていたからである。「はかなき」は「はかなくなる/死ぬ)の婉曲表現。

御息所 01-024

皇子や皇女を生んだ女性に対する敬意の語。桐壺更衣に対する語り手の呼称が変わった。

まかでなむ 01-024

宮中を去る。「な」はきっぱりとの意を添える。すっかり局を開けて、これっきり出てゆくともとれるし、これまでも内々に里帰りをしようとしたが帝の引き留めにあって断念してきたのを、今度こそきっぱりと去る決断をしたとも取れる。おそらく「さらに」と呼応関係を見れば、後者である。

さらに…ず 01-024

全否定で、全く取り合わない、と解釈するのが通例である。しかし、言葉は自在に使われるのであって、いつもルール通りにはいかない。原義に立って考えたい。肯定文の「さらに」は従来の上にさらに加えての意味だから、それを否定したとすれば、従来同様、この度も許さないとなる。従来同様何も付け加えない、すなわち、これまでも許さず、今回も許さないの意味。呼応関係のある陳述の副詞と解釈するか否かは文脈で考えるしかない。

耳でとらえる;立ち現れる〈モノ〉

語りの対象:御息所(桐壺更衣)

その年の夏・御息所はかなき心地にわづらひて・まかでなむとしたまふを》 A・B・C
その年の夏、御息所は死を予感するほどに病んで里に下がろうとなさるが、


暇さらに許させたまはず》D
帝はいっこうに暇を与えようとなさらない。

直列型:A<B<C<D:A<B<C<D

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置
〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

2021-02-2401 桐壺01章~10章,,,

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