その年の夏 御息所 024

2020-09-0301 桐壺01章~10章☆☆☆:特別な問題点はない01 桐壺01章~10章,,,

桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第3章01

その年の夏 御息所はかなき心地にわづらひて まかでなむとしたまふを 暇さらに許させたまはず

その/とし/の/なつ みやすむどころ/はかなき/ここち/に/わづらひ/たまひ/て まかで/な/む/と/し/たまふ/を いとま/さらに/ゆるさ/せ/たまは/ず

その年の夏、御息所は死を予感するほどに病んで里に下がろうとなさるが、帝はいっこうに暇を与えようとなさらない。

解釈の決め手

はかなき心地にわづらひ:横様なること

ちょっとした病気を得てと解釈されるが、ちょっとした病気で宮廷を後にするとは考えにくいし、間もなく亡くなるのも理に合わない。心地の意味として確かに辞書には病気とあるが、病気の時の心持と考える方が適切である。それまでの長患いでは感じなかった死の不安を、はっきりと感じたから里帰りを決断したのである。宮中で死を迎えることは、忌避されていたからである。「はかなき」は「はかなくなる/死ぬ)の婉曲表現。

桐壺 注釈 第3章01

御息所 01-024

皇子や皇女を生んだ女性に対する敬意の語。桐壺更衣に対する語り手の呼称が変わった。

まかでなむ 01-024

宮中を去る。「な」はきっぱりとの意を添える。すっかり局を開けて、これっきり出てゆくともとれるし、これまでも内々に里帰りをしようとしたが帝の引き留めにあって断念してきたのを、今度こそきっぱりと去る決断をしたとも取れる。おそらく「さらに」と呼応関係を見れば、後者である。

さらに…ず 01-024

全否定で、全く取り合わない、と解釈するのが通例である。しかし、言葉は自在に使われるのであって、いつもルール通りにはいかない。原義に立って考えたい。肯定文の「さらに」は従来の上にさらに加えての意味だから、それを否定したとすれば、従来同様、この度も許さないとなる。従来同様何も付け加えない、すなわち、これまでも許さず、今回も許さないの意味。呼応関係のある陳述の副詞と解釈するか否かは文脈で考えるしかない。

語りの対象&構造型

対象:御息所(桐壺更衣)

その年の夏・御息所はかなき心地にわづらひて・まかでなむとしたまふを》 A・B・C
その年の夏、御息所は死を予感するほどに病んで里に下がろうとなさるが、


暇さらに許させたまはず》D
帝はいっこうに暇を与えようとなさらない。

直列型:A<B<C<D:A<B<C<D

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

情報の階層&係り受け

構文:を…許させたまはず/二次

その年の夏 〈御息所〉はかなき心地にわづらひて まかでなむとしたまふ  〈[帝]〉暇さらに許させたまはず

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

係り受け&主語述語

「その年の夏」:「わづらひて」「まかでなむとしたまふ」「許させたまはず」どこにかかるかは、情報の焦点をどこに決めるかによる。御息所の病気か、宮中を出ようとしたことか、帝が許さなかったことか。ここは御息所の病気を焦点に考えるのがよいと思われるが、それが決定できないのであれば、情報は前から後ろに流れるので、前にかけておけば、その後全部にかけることができる。いずれにしても「わづらひて」にかけるのが良さそうだ。


「まかでなむとしたまふを」→「許させたまはず」


「暇さらに許させたまはず」:連用中止法(終止形文末でもよい)

附録

助詞の識別

夏 御息所はかなき心地わづらひ まかでなむ したまふ 暇さらに許さたまは

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の識別

その年の夏 息所はかなき心地にわづらひて まかでなむ としたまふを 暇さらに許さ たまは

尊敬語 謙譲語 丁寧語