朝夕の言種に 翼を 094

2020-09-07☆☆☆:特別な問題点はない01 桐壺,06 時間/時刻・昼夜・季節・時代,07 予言約束・予知神託・名付・夢,,

桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第7章14

朝夕の言種に 翼をならべ 枝を交はさむ と契らせたまひしに かなはざりける命のほどぞ 尽きせず恨めしき

あさゆふ/の/こと-ぐさ/に はね/を/ならべ えだ/を/かはさ/む と/ちぎら/せ/たまひ/し/に かなは/ざり/ける/いのち/の/ほど/ぞ つきせ/ず/うらめし/き

朝な夕な口癖のように、翼をならべ枝を交し合おうと、比翼連理を約束なされたが、かなわなかった命のほどが尽きせず恨めしい。

解釈の決め手

かなはざりける命のほど:病気か呪殺か

桐壺更衣の歌と言葉「いかまほしきは命なりけりいとかく思ひたまへましかば/01-031」を受ける。帝と桐壺更衣の悲恋は、源氏物語の表現からも玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋と重なり合う部分は多い。しかし、明らかに重ならない部分もある。それは、楊貴妃は玄宗皇帝の目の前で臣下の手で殺される。天地が尽きても、その恨みは尽きないと長恨歌の最終詩句に表現され、最も印象深い表現となっている。それに対して帝は恨みを感じている様子が描かれていない。更衣の死が病気であり、寿命ということになれば、誰を恨むこともできない。しかし、そうでない風であることも示唆されている。この点をどうとらえるか、源氏物語全体の読みに関わる問題であろう。

桐壺 注釈 第7章14

翼をならべ枝を交はさむ 01-094

長恨歌の詩句「在天願作比翼鳥在地願為連理枝」を受ける。比翼鳥は雌雄の鳥の翼がくっついた架空の鳥、連理枝は二本の木の枝がひとつにつながった架空の枝、ともに二度と離れないたとえ。

契らせたまひし 01-094

長恨歌の詩句「詞中有誓両心知る(詞の中に誓いあり両心知る)」を受ける。その誓いが比翼連理である。「せたまひ」は文中敬語。主体は桐壺更衣。

語りの対象&構造型

対象:桐壺更衣

朝夕の言種に 翼をならべ枝を交はさむと・契らせたまひしに》A・B
朝な夕な口癖のように、翼をならべ、枝を交し合おうと、比翼連理を約束されたが、


かなはざりける命のほどぞ尽きせず恨めしき》C
かなわなかった命のほどが尽きせず恨めしい。

分岐型:(A<)B<C:A<B<C

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

情報の階層&係り受け

構文:ぞ…恨めしき/四次

〈[桐壺更衣]〉朝夕の言種 翼をならべ 枝を交はさむ と契らせたまひし  かなはざりける命のほど 〈[帝]〉尽きせず恨めしき

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

係り受け&主語述語

「契らせたまひしに」→「恨めしき」

附録

助詞の識別

朝夕言種 翼ならべ 枝交はさ 契らたまひ  かなはざり けるほど 尽きせ恨めしき

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の識別

朝夕の言種に 翼をならべ 枝を交はさむ と契ら たまひし に かなはざり ける命のほどぞ 尽きせず恨めしき

尊敬語 謙譲語 丁寧語