限りあれば 例の作 038 ★★☆

2021-01-2301 桐壺01章~10章,03 衣・食・住・車・内裏・後宮,05 空間/天候・風景・自然・環境,

限りあれば例の作法にをさめたてまつるを母北の方同じ煙に 原文 読み 意味 桐壺第4章03/源氏物語

限りあれば 例の作法にをさめたてまつるを 母北の方 同じ煙にのぼりなむと泣きこがれたまひて 御送りの女房の車に慕ひ乗りたまひて 愛宕といふ所に いといかめしうその作法したるに おはし着きたる心地 いかばかりかはありけむ

かぎり/あれ/ば れい/の/さほふ/に/をさめ/たてまつる/を はは-きたのかた おなじ/けぶり/に/のぼり/な/む/と/なき/こがれ/たまひ/て おほむ-おくり/の/にようばう/の/くるま/に/したひ/のり/たまひ/て おたぎ/と/いふ/ところ/に いと/いかめしう/その/さほふ/し/たる/に おはし/つき/たる/ここち いかばかり/か/は/あり/けむ

規則のあることだから作法どおりに葬って差し上げるが、母君は同じ煙に乗ってあの世へ行ってしまいたいと泣きこがれになり、葬送の女房の車に無体にお乗りになって、愛宕というおごそかに葬儀が執り行われている土地へお着きになったお心持ちは、どのようなものであったでしょうか、

大構造(いかばかりかはありけむ/五次)& 係り受け

〈限り〉あれ 〈[更衣の遺体]〉例の作法にをさめたてまつる 〈母北の方〉同じ煙にのぼりなむと泣きこがれたまひて 御送りの女房の車に慕ひ乗りたまひて 愛宕といふ所 いといかめしうその作法したる おはし着きたる〈心地〉 いかばかりかはありけむ

主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

「例の作法にをさめたてまつるを」→「母北の方…おはし着きたる」


「同じ煙にのぼりなむと泣きこがれたまひて」「御送りの女房の車に慕ひ乗りたまひて」:特殊な対がおかしみを誘う


「愛宕といふ所に」「いといかめしうその作法したるに」:言い換え


「いかばかりかはありけむ」:語り手による母北の方に対する心情推量

物語の深部を支える重要語句へのアプローチ

御送りの女房の車に慕ひ乗りたまひて:奇矯さ

葬送には、目上の者は参列しないのが慣わしなので、母宮の行動は当時の行動様式から考えると奇矯なものである。しかし、式部は、娘の死が度外れた行動をとらしむることを奇矯とはとらず、同情をもって描いている。これは当時にあっては特異な才能である。清少納言は弱者を好奇な目で見る目はもっているが、同情はしない(同情することはヒエラルキーを逆転させることだから)。万葉の古代世界はこの点おおらかである。「母北の方なむいにしへの人のよしあるにて(母は家柄の古い教養豊かなお方で)/01-006」と響きあう。

いかめしう

内部のエネルギーが外にほとばしり出る様子。母のイメージしていたよりも、葬儀の規模が壮大である。圧倒的であることに加えて、「同じ煙にのぼりなむ」と言ってはみたが、赤々とすごい炎を上げて燃え上がる厳めしいほむらを見て、気持ちが萎縮したであろうことが読み取れる。帝の情愛を受けるということは母の想像に余るのである。

桐壺 注釈 第4章03

限り 01-038

かぎること、ここまではよくてここからはだめだというルールが原則。規則。

をさめ 01-038

火葬すること。

こがれ 01-038

身がやけ焦がれるほど恋しく思う。火葬にかける。

愛宕 01-038

今の六道珍皇寺(京都市六条大和小路)のあたり。

助詞の識別/助動詞の識別:

限りあれ 例作法をさめたてまつる 母北の方 同じ煙のぼり泣きこがれたまひ 御送り女房慕ひ乗りたまひ 愛宕いふ所 いといかめしうその作法したる おはし着きたる心地 いかばかりありけむ

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の識別:

限りあれば 例の作法にをさめたてまつるを 母北の方 同じ煙にのぼりなむ と泣きこがれたまひて 送りの女房の車に慕ひ乗りたまひて 愛宕といふ所に いといかめしうその作法したる に おはし着きたる心地 いかばかりか はありけむ

尊敬語 謙譲語 丁寧語

附録:耳からの情報処理(語りの対象 & 構造型)

語りの対象:慣例桐壺更衣の遺体母北の方語り手の思い入れ

限りあれば 例の作法にをさめたてまつるを》A
規則のあることだから作法どおりに葬って差し上げるが、


母北の方・同じ煙にのぼりなむと泣きこがれたまひて・御送りの女房の車に慕ひ乗りたまひて》 B・C・D
母君は同じ煙に乗ってあの世へ行ってしまいたいと泣きこがれになり、葬送の女房の車に無体にお乗りになって、


愛宕といふ所に・いといかめしうその作法したるに・おはし着きたる》 E・F・G
愛宕というおごそかに葬儀が執り行われている土地へお着きになったお心持ちは、


心地いかばかりかはありけむ》 H
どのようなものであったでしょうか、

分岐型・反復型:A<B<C+D<E~EF<G<H:A<B<C+D<E~EF<G<H(FはEの言い換え)

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用