若宮はいかに思ほし 064

2020-09-07☆☆☆:特別な問題点はない01 桐壺,,めり

桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第5章15

若宮はいかに思ほし知るにか 参りたまはむことをのみなむ思し急ぐめれば ことわりに悲しう見たてまつりはべるなど うちうちに思うたまふるさまを奏したまへ ゆゆしき身にはべれば かくておはしますも忌ま忌ましうかたじけなくなむ とのたまふ

わかみや/は/いかに/おもほし/しる/に/か まゐり/たまは/む/こと/を/のみ/なむ/おぼし-いそぐ/めれ/ば ことわり/に/かなしう/み/たてまつり/はべる/など うちうち/に/おもう/たまふる/さま/を/そうし/たまへ ゆゆしき/み/に/はべれ/ば かくて/おはします/も/いまいましう/かたじけなく/なむ と/のたまふ

若宮はどのようにしてお知りになってか、宮中に参ることばかりを願われご準備なさっておいでの様子ですので、そうなさるのが道理ながら悲しくお見受けいたしておりますことなど、心の中で考えていることなどを内々にご奏上ください。(娘に先立たれた)不吉な身でありますれば、このまま宮がここにあそばされるのも忌まわしく恐れ多いことで、と母北の方はおっしゃる。

063・064共通解釈の決め手

百敷:掛詞風

百敷は内裏、宮中の言い換え。百敷の百は百歳を暗示させる。

行きかひ:人交わり

百敷と里を行き交うのではなく、百敷(後宮)の中を行き交う。即ち、宮仕えをすること。帝から宮中に呼ばれることは、女官として働くことを意味する。

いかに思ほし知るにか:宮中からの派遣女房の存在

「参りたまはむことをいかに思ほし知るにか」の倒置。光の君が里下がりするについては、内裏から女房や乳母が付き添っているはずで、そうした者たちは、内裏を懐かしがって、早くお帰りなさいと光の君に勧めたことが容易に想像される。

うちうちに:秘密裏に

光源氏が宮中に戻ることは皇太子候補が一人増えることになるので、帰還したあとの準備を内密に行う必要がある。

桐壺 注釈 第5章15

命長さ 01-064

寿命が長いこと。娘に先立たれたことから来る。

松の思はむこと 01-064

「いかでなほありと知らせじ高砂の松の思はむこともはづかし(どうしても自分が未だに生きているとは知らせたくないものだ、高砂の松がわたしと同じようにおまえは長生きだなと思うのも気が引ける)/古今六帖・五)による。

急ぐめれば 01-064

内裏に戻る準備をしているようなので。「めり」は目に見えることを暗示する。

ことわりに 01-064

光の君は帝の子なので、宮中に戻るのが道理との認識。

悲しう 01-064

母君は宮中に連れ添うつもりがないので、別れることを前提に悲しんでいる。

ゆゆしき身 01-064

娘に先立たれた逆順をいうのだろう。

かくておはします 01-064

尊敬語の使用から主語は光の君を表す。「かくて」は「かくありて」の省略、このような状態が継続すること。このような草深い場所で帝の子が育つこと。

語りの対象&構造型:前を参照

情報の階層&係り受け

構文:とのたまふ/五次

〈[母君]〉 命長さのいとつらう思うたまへ知らるる  松の思はむことだに恥づかしう思うたまへはべれ  百敷に行きかひはべらむ〈こと〉はましていと憚り多くなむ  かしこき仰せ言たびたび承り ながら みづからはえなむ思ひたまへたつまじき   〈若宮〉は いかに思ほし知るにか  参りたまはむことをのみなむ思し急ぐめれ  〈[私=母君]〉ことわりに悲しう見たてまつりはべるなど   うちうちに思うたまふるさまを[命婦よ]奏したまへ ゆゆしき身にはべれ  かくて〈おはします〉も忌ま忌ましうかたじけなくなむ  のたまふ

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

/01-063と/01-064はセットで色づけする。


四つの文からなる比較的単純な文構造ではあるが、比喩などレトリックが多用され、かなり難易度の高い。次回に詳細な注をつける。

係り受け&主語述語

「百敷に行きかひはべらむことはましていと憚り多くなむ」(対自的)「かしこき仰せ言をたびたび承りながらみづからはえなむ」(対他的)→「思ひたまへたつまじき」


「いかに思ほし知るにか」→「参りたまはむことを」


「かくておはします」:主語は若宮