一の皇子は右大臣の 009

2020-09-0301 桐壺,分配型,なり(断),べし

桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第2章03

一の皇子は右大臣の女御の御腹にて 寄せ重く疑ひなき儲の君と世にもてかしづききこゆれど この御にほひには並びたまふべくもあらざりければ おほかたのやむごとなき御思ひにて この君をば私物に思ほしかしづきたまふこと限りなし

いち-の-みこ/は うだいじん-の-にようご/の/おほむ-はら/にて よせ/おもく/うたがひ/なき/まうけ-の-きみ/と/よ/に/もて-かしづき/きこゆれ/ど この/おほむ-にほひ/に/は/ならび/たまふ/べく/も/あら/ざり/けれ/ば おほかた/の/やむごとなき/おほむ-おもひ/にて この/きみ/をば/わたくしもの/に/おもほし/かしづき/たまふ/こと/かぎり/なし

第一皇子は右大臣家の娘である女御がお産みの御子で世の信頼が厚く、紛がうことなき次期皇太子だと、世間は大切に慈しみ申し上げているけれど、若宮が放つ魅力には及ぶべくもないことなので、第一皇子は公(おおやけ)として相応に尊ばれたのに対して、この宮は秘蔵子として慈しみお育てになるご愛情には限りがございませんでした。

解釈の決め手

御にほひ:全人の魅力

周囲に発散させる魅力。気品や匂い肌つやの輝きなど。これに後年は声色・話しぶり・言葉遣い・教養などが加わる。

私物:公の中の私

帝の息子たちは次期皇太子候補であり、国家の枢要を担う公的な存在である、帝であっても私物化できる対象ではない。よって、「私物(わたくしもの)」という表現には「私物(しぶつ)」とは異なる意味がなければならない。「私」「公」と対をなす。
一、「公」(社会的評価):「一の皇子」>「光源氏」
二、「私」(帝の個人的評価):「一の皇子」<「光源氏」 つまり、一の皇子は公的な存在とするが、光源氏は公的存在として一の皇子と対立させるのではなく、私人として帝の内面において重視するほどの意味であろう。

桐壺 注釈 第2章03

寄せ 01-009

気持ちを寄せる対象で、世間からの信頼、期待。

疑ひなき 01-009

他に取って変わられる恐れがないこと。

儲の君 01-009

次期帝となる人。すなわち東宮、皇太子。

世に 01-009

非常にの意味でも使用されるが、ここでは世間ではの意味を含む。「もてかしづききこゆれ」の主体は世間。帝であれば尊敬語がつく。

おほかたの 01-009

この場合「私物」の「私」に対立する。公事、世間的に。

やむごとなき 01-009

やむことがない。

御思ひ 01-009

愛情。

語りの対象&構造型

対象:一の皇子世間この君(光の君)

一の皇子は右大臣の女御の御腹にて・寄せ重く疑ひなき儲の君 と 世にもてかしづききこゆれど》A・B
第一皇子は右大臣家の娘である女御がお産みの御子で世の信頼が厚く、紛がうことなき次期皇太子だと、世間は大切に慈しみ申し上げているけれど、


この御にほひ には並びたまふべくもあらざりければ・ おほかたのやむごとなき御思ひにて》C・D
若宮が放つ魅力には及ぶべくもないことなので、第一皇子は公(おおやけ)として相応に尊ばれたのに対して、


この君 をば私物に思ほしかしづきたまふこと限りなし》E
この宮は秘蔵子として慈しみお育てになるご愛情には限りがございませんでした。

中断型・分配型:A<B<C<D|*C<E:A<B<C<D、*C<E

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

情報の階層&係り受け

構文:限りなし/四次

〈一の皇子〉 右大臣の女御の御腹にて 寄せ重く疑ひなき儲の君にもてかしづききこゆれ  この御にほひには並びたまふべくもあらざりけれ  おほかたのやむごとなき御思ひにて 〈[帝]〉この君をば私物に思ほしかしづきたまふ 〈こと〉限りなし

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

係り受け&主語述語

「右大臣の女御の御腹にて」(一の皇子に対する事実)→「もてかしづききこゆれ」


「世にもてかしづききこゆれど」(一の皇子に対する世間評価)→「並びたまふべくもあらざりけれ」


「この御にほひには並びたまふべくもあらざりければ」(光の君との事実比較)→「おほかたのやむごとなき御思ひに」


「おほかたのやむごとなき御思ひにて」(一の皇子に対する帝の内面評価)→「この君をば私物に思ほしかしづきたまふ」:帝の外面(公)と内面(私)の対比


「この君をば私物に思ほしかしづきたまふこと限りなし」:光の君に対する帝の内面評価

附録

助詞の識別

皇子右大臣女御御腹  寄せ重く疑ひなき儲もてかしづききこゆれ こ御にほひ 並びたまふべく あらざり けれ  おほかたやむごとなき御思ひ  こ 私物思ほしかしづきたまふこと限りなし

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の識別

一の皇子は右大臣の女御の腹にて 寄せ重く疑ひなき儲の君と世にもてかしづききこゆれど このにほひには並びたまふべくもあらざりければ おほかたのやむごとなき思ひにて この君をば私物に思ほしかしづきたまふこと限りなし

尊敬語 謙譲語 丁寧語

2020-09-0301 桐壺,分配型,なり(断),べし

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