内裏には もとの淑 179
桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第10章39
内裏には もとの淑景舎を御曹司にて 母御息所の御方の人びと まかで散らずさぶらはせたまふ
うち/に/は もと/の/しげいさ/を/おほむ-ざうし/に/て はは-みやすむどころ/の/おほむ-かた/の/ひとびと まかで/ちら/ず/さぶらは/せ/たまふ
宮中では母親のもとの局(つぼね)である淑景舎(しげいしゃ)を部屋にあて、母の御息所つきの女房たちを散り散りにならぬよう残らずお仕えさせになる。
物語の深部を支える重要語句へのアプローチ
母御息所の御方の人びと:水面下で支える人びと
「母御息所の、御方の人びと」ではなく「母御息所の御方の、人びと」である。「母御息所の御方」が桐壺更衣。人々は桐壺更衣付きの女房たち。貴族は一人で行動することはなく、さまざまな情報を取り次ぐ女房たちを通して得るため、女房たちが有能か、仕える相手に従順かなどは極めて重要事であった。
桐壺 注釈 第10章39
淑景舎 01-179
桐壺のこと。母である桐壺更衣が使用していた局。
御曹司 01-179
私室。
さぶらはせたまふ 01-179
主体は光源氏とも考えられるが、「御方々の人びと世の中におしなべたらぬを選りととのへすぐりてさぶらはせたまふ/01-177」とパラレルと考えれば、「さぶらはせたまふ」主体は帝であろう。
附録:耳からの情報処理(語りの対象 & 構造型)
語りの対象:帝/桐壺更衣付の女房たち(そのまま光源氏付きの女房となる)
《内裏には もとの淑景舎を御曹司にて》A
宮中では母親のもとの局(つぼね)である淑景舎(しげいしゃ)を部屋にあて、
《母御息所の御方の人びと まかで散らずさぶらはせたまふ》B
母の御息所つきの女房たちを散り散りにならぬよう残らずお仕えさせになる。
直列型:A<B:A<B
A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
※係り受けは主述関係を含む
〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用
大構造(まかで散らずさぶらはせたまふ/二次)& 係り受け
〈[帝]〉内裏には もとの淑景舎を御曹司にて 母御息所の御方の人びと まかで散らずさぶらはせたまふ
〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]: 補 /: 挿入 @・@・@・@:分岐
「内裏には」→「さぶらはせたまふ」(「御方々の人びと世の中におしなべたらぬを選りととのへすぐりてさぶらはせたまふ/01-177」とパラレル)
助詞の識別/助動詞:ず す
内裏には もとの淑景舎を御曹司にて 母御息所の御方の人びと まかで散らずさぶらはせたまふ
助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
敬語の識別:御 まかづ まぶらふ たまふ
内裏に は もとの淑景舎を御曹司に て 母御息所の御方の人びと まかで散らずさぶらはせたまふ
尊敬語 謙譲語 丁寧語