今までとまりはべる 056

2021-02-2401 桐壺01章~10章,05 空間/天候・風景・自然・環境

原文 読み 意味 桐壺第05章07@源氏物語

今までとまりはべるがいと憂きを かかる御使の蓬生の露分け入りたまふにつけても いと恥づかしうなむとて げにえ堪ふまじく泣いたまふ

いま/まで/とまり/はべる/が/いと/うき/を かかる/おほむ-つかひ/の/よもぎふ/の/つゆ/わけ-いり/たまふ/に/つけ/て/も いと/はづかしう/なむ/とて げに/え/たふ/まじく/ない/たまふ

これまで生き長らえて来ましたことが何とも心苦しいのに、このような帝のお使いが草深い家へ露に濡れながらお越しいただくにつけても、居たたまれない思いがしてと、いかにも堪えがたそうにお泣きになる。

文構造&係り受け 01-056

主述関係に見る文構造(とて…泣いたまふ:五次

〈[母君]〉まで〈とまりはべる〉がいと憂き かかる〈御使〉の蓬生の露分け入りたまふにつけても いと恥づかしうなむとて げにえ堪ふまじく泣いたまふ

色分:〈主語〉助詞・述語 [ ]:補充 //挿入 |:休止 @@@@@@@@:分岐

機能語に見る係り受け

今までとまりはべるがいと憂きを かかる御使の蓬生の露分け入りたまふにつけても いと恥づかしうなむとて げにえ堪ふまじく泣いたまふ

「今までとまりはべるがいと憂きを」:「連体形+「主格」が+「連体形」


「かかる御使の…露分け入りたまふ」:A「主格」のB連体形

  • いと憂き→(露分け入りたまふにつけても→恥づかし)
  • いと恥づかしうなむとて→泣いたまふ
助詞・助動詞の識別:まじく
  • まじく:不可能・まじ・連用形

までとまりはべるいと憂き かかる御使蓬生露分け入りたまふつけ いと恥づかしうなむ げにえ堪ふまじく泣いたまふ

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の区別:はべり 御 たまふ たまふ

今までとまりはべるがいと憂きを かかる使の蓬生の露分け入りたまふにつけて も いと恥づかしうなむ と て げにえ堪ふまじく泣いたまふ

尊敬語 謙譲語 丁寧語

古語探訪;失われた意味を求めて

御使の蓬生の露分け入りたまふ 01-056:雅語

「蓬生の露分け入り」は蓬生のような鄙びた場所に、露に濡れながら分け入るという意味を歌語のように圧縮して述べた表現。このあたりも母北の方の「いにしへの人のよしあるにて/01-006」的な要素なのだろう。

とまりはべる 01-056

「母北の方、同じ煙にのぼりなむと、泣きこがれたまひて(母君は同じ煙に乗ってあの世へ行ってしまいたいと泣きこがれになり)/01-038」とあるが、今まで生きながらえてきた。そのことに対する弁明でもある。

いと憂き 01-056

出口のない不満が鬱積している状態。

恥づかしう 01-056

生きながらえてきたことに加えて、帝からの使者に対して。母君の真の狙いは、光の君の価値を高めること。やすやすと帝に渡すつもりはない。表面上の言葉のやりとりと、真の狙いのズレを読み取るのがポイントになる。もちろん、命婦も承知の上で、言葉通りに受けたり、すかしたりする。

耳でとらえる;立ち現れる〈モノ〉

語りの対象:母君勅使の命婦

今までとまりはべるがいと憂きを》A
これまで生き長らえて来ましたことが何とも心苦しいのに、


かかる御使の蓬生の露分け入りたまふにつけてもいと恥づかしうなむとて》B
このような帝のお使いが草深い家へ露に濡れながらお越しいただくにつけても、居たたまれない思いがしてと、


げにえ堪ふまじく泣いたまふ》C
いかにも堪えがたそうにお泣きになる。

直列型:(A<B<)C<:A<B<C

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置
〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用