参りては いとど心 057

2020-09-0701 桐壺01章~10章☆☆☆:特別な問題点はない01 桐壺01章~10章,けり,,なり(断)

桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第5章08

参りては いとど心苦しう 心肝も尽くるやうになむと 典侍の奏したまひしを もの思うたまへ知らぬ心地にも げにこそいと忍びがたうはべりけれとて ややためらひて 仰せ言伝へきこゆ

まゐり/て/は いとど/こころぐるしう こころぎも/も/つくる/やう/に/なむ/と ないし-の-すけ/の/そうし/たまひ/し/を もの/おもう/たまへ/しら/ぬ/ここち/に/も げに/こそ/いと/しのび-がたう/はべり/けれ/とて やや/ためらひ/て おほせごと/つたへ/きこゆ

お訪ねしましてはますます心が痛み魂も消え入りそうでと、以前典侍が奏上なさっていましたが、情理にうといふつつか者にも、全くもって忍びがたかろうと存じますと言い、しばし心を静めてから、命婦は帝の仰せごとをお伝え申し上げる。

解釈の決め手

典侍の奏したまひしを:間接ドラマ

省略されているが、すでに典侍が母君の元を訪れ、その時の模様を帝に報告している。その復命の言葉を命婦は聞いていたとの設定。省略は源氏物語の重要な技法のひとつ。あなたのような立派なお方が来られては「恥ずかしい」と言って、母君が距離を置こうとしたのに対して、それは取り合わず、まったく耐え難いことですねと同情から入って、帝の言葉を伝える。「を」は一般に接続助詞とされるが、詠嘆を表す間助詞とも考え得る。その方が「げにこそ」の感動が意味をなす。また接続がはっきりしないことからも、間助詞を支持する。

ためらひ:間合い

感情を抑制すること。「ため」を作った後に。はやる気持ちを押さえるの意。命婦は勅使であり、感情に走る母君とは別の立場にある。ここの場面は一種の性格喜劇となっていて、冷静な人と感情的な人とが、ついに折り合わず別れることになる。

桐壺 注釈 第5章08

もの思うたまへ知らぬ 01-057

「もの」は世情。自分の守備範囲にない点で「もの」と言い表されている。世情に疎い身ながら。

忍びがたうはべりけれ 01-057

帝の世継ぎを産みながら、親に先立ち娘を失った境遇は。

語りの対象&構造型

対象:典侍(命婦以前の勅使)命婦

参りてはいとど心苦しう心肝も尽くるやうになむと・典侍の奏したまひし 》A・B
お訪ねしましてはますます心が痛み魂も消え入りそうでと、以前典侍が奏上なさっていましたが、

もの思うたまへ知らぬ心地にも・げにこそいと忍びがたうはべりけれとて》 C・D
情理にうといふつつか者にも、全くもって忍びがたかろうと存じますと言い、

ややためらひて  仰せ言 伝へきこゆ》E
しばし心を静めてから、命婦は帝の仰せごとをお伝え申し上げる。

分岐型:A<B<(C<)D<E:A<B<D<E、C<D

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

情報の階層&係り受け

構文:とて…ためらひて…伝へきこゆ/五次

参りては いとど心苦しう 心肝も尽くるやうになむ  〈典侍〉の奏したまひし  もの思うたまへ知らぬ心地にも げにこそいと忍びがたうはべりけれ とて  〈[命婦]〉ややためらひて 仰せ言伝へきこゆ

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

係り受け&主語述語

「奏したまひしを」→「げにこそいと忍びがたうはべりけれ」

附録

助詞の識別

参り  いとど心苦しう 心肝尽くるやう なむ  典侍奏したまひ  もの思うたまへ知ら心地  げにこそいと忍びがたうはべりけれ  ややためらひ 仰せ言伝へきこゆ

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の識別

参りて は いとど心苦しう 心肝も尽くるやうに なむ と 典侍の奏し たまひしを もの思うたまへ知らぬ心地に も げにこそいと忍びがたうはべりけれ と て ややためらひて 仰せ言伝へきこゆ

尊敬語 謙譲語 丁寧語