事にふれて数知らず 019

2021-03-03

原文 読み 意味 桐壺02章13@源氏物語

事にふれて数知らず苦しきことのみまされば いといたう思ひわびたるを いとどあはれと御覧じて 後涼殿にもとよりさぶらひたまふ更衣の曹司を 他に移させたまひて上局に賜はす

こと/に/ふれ/て/かず/しら/ず/くるしき/こと/のみ/まされ/ば いと/いたう/おもひ-わび/たる/を いとど/あはれ/と/ごらんじ/て こうらうでん/に/もとより/さぶらひ/たまふ/かうい/の/ざうし/を ほか/に/うつさ/せ/たまひ/て うへつぼね/に/たまは/す

ことに触れ数しらず苦しいことばかりがいや増すので、それはもうひどく思い悩んでいらっしゃるのを、帝はますます愛情深くお思いになって、後涼殿に元からお仕えである更衣を、よそにお移しになり、空いた部屋を桐壺の上局として下賜なさいました。

文構造&係り受け

主語述語と大構造 に賜はす:四次

〈[桐壺更衣]〉にふれて数知らず〈苦しきこと〉のみまされ いといたう思ひわびたる 〈[帝]〉いとど @ あはれ @と御覧じて 後涼殿にもとよりさぶらひたまふ更衣の曹司 他に移させたまひて上局に賜はす

機能語と係り受け

事にふれて数知らず苦しきことのみまされば いといたう思ひわびたるを いとど〈あはれ〉と御覧じて 後涼殿にもとよりさぶらひたまふ更衣の曹司を 他に移させたまひて上局に賜はす

  • 事にふれて数知らず苦しきことのみまされ→いといたう思ひわびたり+→いとど〈あはれ〉と御覧ず+→後涼殿にもとよりさぶらひたまふ更衣の曹司を移させたまふ+上局に賜はす

更衣の曹司を他に移させたまひて上局に賜はす:後涼殿から更衣の曹司を他に移して、空いた後涼殿を桐壺の上局としてお与えになった。

ふれ数知ら苦しきことのみまされ いといたう思ひわびたる いとどあはれ御覧じ 後涼殿もとよりさぶらひ たまふ更衣曹司 他移さたまひ上局賜はす

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

助詞・助動詞の識別:ず たる せ

  • :打消・ず・連用形→まさる
  • たる:存続・たり・連体形
  • :尊敬・す・連用形/「せたまふ」:最高敬語
敬語の区別:御覧ず さぶらふ たまふ たまふ 賜はす

事にふれて数知らず苦しきことのみまされば いといたう思ひわびたる を いとどあはれと御覧じて 後涼殿にもとよりさぶらひたまふ更衣の曹司を 他に移させたまひて上局に賜はす

尊敬語 謙譲語 丁寧語

  • 賜はす:「賜ふ」と「す」の合成語で一語と考えても二語と考えても良い。「す」は尊敬説・使役説がある。

古語探訪;失われた意味を求めて

事 01-019

「もの」が運命・決まり・霊的存在など人の力の及ばない存在であるのに対して、「事」は人と人との間に発生する事態。従って、解決不能というわけではないが、あまりにも敵が多く実際には解決する術を失っていた。帝の寵愛を受けて悦びはあるものの、それより遙かに苦しみが勝った。

上局 01-019

普段住んでいる局(下局、里の局とも)に対して、帝がおられる清涼殿に上がる際の清涼殿に隣接する控えの間。これが与えられるのも特別待遇である。なお、もとの桐壺は局として継続使用されるゆえ、更衣の呼び名は桐壺のままである。桐壺更衣の死後、成長した光の君は、内裏に泊まる際には、この局を自分の部屋として使用する。

わびたる 01-019

自分の非力さを今更ながらに思い知ること。

あはれ 01-019

愛情・哀れみなどから躍起される強い心の揺れ。

後涼殿 01-019

清涼殿の西隣の御殿。

曹司 01-019

局と同じく部屋。

耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉

語りの対象:桐壺更衣後涼殿の更衣

直列型:A→B→C→D:A→B→C→D

事にふれて数知らず苦しきことのみまされば・いといたう思ひわびたるをいとどあはれと御覧じて》 A・B
ことに触れ数しらず苦しいことばかりがいや増すので、それはもうひどく思い悩んでいらっしゃるのを、帝はますます愛情深くお思いになって、


後涼殿にもとよりさぶらひたまふ更衣の曹司を 他に移させたまひて・上局に賜はす》 C・D
後涼殿に元からお仕えである更衣を、よそにお移しになり、空いた部屋を桐壺の上局として下賜なさいました。

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