今は誰れも誰れもえ 114
原文 読み 意味 桐壺08章09@源氏物語
今は誰れも誰れもえ憎みたまはじ 母君なくてだにらうたうしたまへ とて弘徽殿などにも渡らせたまふ御供には やがて御簾の内に入れたてまつりたまふ
いま/は/たれ/も/たれ/も/え/にくみ/たまは/じ ははぎみ/なく/て/だに/らうたう/し/たまへ と/て/こうきでん/など/に/も/わたら/せ/たまふ/おほむ-とも/に/は やがて/み-す/の/うち/に/いれ/たてまつり/たまふ
今はもう誰もお憎みなさらぬよう。母君がいないだけでも可愛がってお上げなさいと、弘徽殿などへもお渡りになるお供とされる時には、そのまま御簾の中に入れて差し上げになるのです。
文構造&係り受け
主語述語と大構造 とて…には…に入れたてまつりたまふ:三次
〈[帝]〉今は〈誰れ〉も〈誰れ〉もえ憎みたまはじ 〈母君〉なくてだにらうたうしたまへ とて弘徽殿などにも渡らせたまふ御供には やがて御簾の内に入れたてまつりたまふ
色分:〈主語〉助詞・述語 [ ]:補充 //挿入 |:休止 @@・@@・@@・@@:分岐
機能語と係り受け
今は誰れも誰れもえ憎みたまはじ 母君なくてだにらうたうしたまへ とて弘徽殿などにも渡らせたまふ御供には やがて御簾の内に入れたてまつりたまふ
「とて」→「御簾の内に入れたてまつりたまふ」
「御供には」→「入れたてまつりたまふ」
助詞・助動詞の識別:じ せ
- じ:
- せ:
今は誰れも誰れもえ憎みたまはじ 母君なくてだにらうたうしたまへ とて弘徽殿などにも渡らせたまふ御供には やがて御簾の内に入れたてまつりたまふ
助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
敬語の区別:たまふ たまふ せたまふ 御 御 たてまつる たまふ
今は誰れも誰れもえ憎みたまはじ 母君なくて だにらうたうしたまへ とて弘徽殿など に も渡らせたまふ御 供に は やがて御簾の内に入れたてまつりたまふ
尊敬語 謙譲語 丁寧語
古語探訪;失われた意味を求めて
じ 01-114
二人称に対して否定の勧誘。…しないように。
母君なくてだに 01-114
母がいないというだけで大変なのだから。
らうたう 01-114
労多しが原義で、いたわる気持ち。
弘徽殿などにも渡らせたまふ 01-114
「弘徽殿などにも渡らせたまふ」で文を切るテキストがあるが、「とて」「渡らせたまふ」では意味をなさない。
やがて 01-114
そのまま。元服するまでは、光の君は帝の夫人たちの部屋に入ることが許された。これが引いて藤壺との密通につながる。
耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉
語りの対象:弘徽殿の女御や他の女御更衣たち/光源氏/帝
《今は誰れも誰れもえ憎みたまはじ 母君なくてだにらうたうしたまへ とて》A
今はもう誰もお憎みなさらぬよう。母君がいないだけでも可愛がってお上げなさいと、
《弘徽殿などにも渡らせたまふ御供には やがて御簾の内に入れたてまつりたまふ》B
弘徽殿などへもお渡りになるお供とされる時には、そのまま御簾の中に入れて差し上げになるのです。
直列型:A→B:A→B
A→B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
〈直列型〉→:修飾 #:倒置
〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉|:中止法・独立文 //:挿入
〈反復型〉~AX:Aの言換えX ,AB:Aの同格B 〈分配型〉A→B*C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用