限りあらむ道にも後 030 ★☆☆

2020-09-03★☆☆:語義の洗い直しから01 桐壺,,す・さす,

桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第3章07

限りあらむ道にも後れ先立たじと 契らせたまひけるを さりともうち捨ててはえ行きやらじ とのたまはするを 女もいといみじと見たてまつりて

かぎり/あら/む/みち/に/も/おくれ-さきだた/じ/と ちぎら/せ/たまひ/ける/を さりとも/うち-すて/て/は/え/ゆきやら/じ と/のたまはする/を をむな/も/いと/いみじ/と/み/たてまつり/て

宿命で決まった道であっても後れ先立ちはしないとお誓いになったのに。つらくてもまさかうち捨て行っておしまいではないねとおっしゃるのを、女もたまらなくおいたわしいと存じ上げて、

解釈の決め手

女:男と女

それまでの呼称から「女」に代わる場合、一人の男と一人の女が逢瀬を演じる場面となる。性の交渉が衣服を脱ぎ捨て、同時に身分の差をも脱ぎ捨てるように、歌の応答においても身分差は失われ、それがために敬語は使用されない。

いみじ:魂振り

かつての閨で寝物語に口にした「後れ先立たじ」との誓いの言葉が、帝の言葉により深く魂がゆさぶれることで覚醒し、死に態であった更衣は最期の力を振り絞って歌を詠み上げる。言葉が先に合って(この場合は誓いの言葉)、後で事実がついてくるという関係が源氏物語では多様される。この関係を「(言=事)構造」と呼ぶことにする。なおまた、歌は魂を揺すぶられる状況(「魂振り」)があり、励起した魂が言葉に宿って口から発せられるもので、聴く者の魂がそれによって励起させられるために、歌を返さずには魂は鎮まらないのである。

桐壺 注釈 第3章07

限りあらむ道 01-030

前世より時期の定まっている死出の道。

後れ先立たじ 01-030

一方が生き残るようなことはしない、死ぬときは一緒である。

契らせたまひける 01-030

「せたまひける」会話でも最高敬語とは解しにくいから、私に約束させた。「せ」は使役。私に約束させておいて、自分から破るのですかという、問い詰め。

さりとも 01-030

「さありとも」の略で、そうではあっても、即ち、いくら容態がよくないとはいってもこのまま。

え行きやらじ 01-030

これが帝の訴えの核心。この言の葉が死にかかっている女の霊が揺さぶるのが「いみじ」。「行きやる」は自分を置いてどんどん行ってしまう。

語りの対象&構造型

対象:桐壺更衣

限りあらむ道にも後れ先立たじと契らせたまひけるを・さりともうち捨ててはえ行きやらじ とのたまはする 》 A・B
宿命で決まった道であっても後れ先立ちはしないとお誓いになったのに。つらくてもまさかうち捨て行っておしまいではないねとおっしゃるのを、


女もいといみじと見たてまつりて》C
女もたまらなくおいたわしいと存じ上げて、

直列型:A<B<C:A<B<C

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

情報の階層&係り受け

構文:を…も…と見たてまつりて/五次

〈[女]〉限りあらむ道にも後れ先立たじ  契らせたまひける  〈[帝]〉さりともうち捨ててはえ行きやらじ とのたまはする  〈女〉もいといみじと見たてまつりて

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

係り受け&主語述語

「を」:終助詞/一般には接続助詞と考えられているが、「さりとも」が生きない。詠嘆の終助詞で間をおき、「さりとも」(現状がこうでも)と言葉を続ける方が劇的であろう。

附録

助詞の識別

限りあら 後れ先立た  契らたまひける  さりともうち捨て え行きやら のたまはする 女いといみじ見たてまつり

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の識別

限りあらむ道に も後れ先立たじ と 契ら たまひける を さりともうち捨てて はえ行きやらじ とのたまはするを 女もいといみじと見たてまつり

尊敬語 謙譲語 丁寧語