御盃のついでに い 159 ★★★

2020-09-1401 桐壺01章~10章★★★:源氏千年の謎に挑む01 桐壺01章~10章,04 公的生活/出世・祝賀・行事,07 予言約束・予知神託・名付・夢,08 物語の構造/歌

桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第10章19

御盃のついでに
 いときなき初元結ひに 長き世を 契る心は 結びこめつや
御心ばへありて おどろかさせたまふ

おほむ-さかづき/の/ついで/に
 いときなき/はつ-もとゆひ/に ながき/よ/を ちぎる/こころ/は むすび/こめ/つ/や
み-こころばへ/あり/て /おどろか/させ/たまふ

お杯を賜るついでに、 いたいけな宮が初めて髪を結ぶ元結には末長い寿ぎの気持ちに娘との末長いえにしの願いをこめたであろうの 元結の礼に結婚の祝福のご趣向もあって大臣をはっとおさせになる。

解釈の決め手

御心ばへありておどろかせたまふ:左大臣はなぜはっとしたのか

「おどろかす」は気づかせる、注意を喚起するの意味。注意する内容は、注意を受ける側にとって、予期していなかったことでなければならない。この箇所は通例、添臥の件について帝が念押しすると解釈するが、すでに念頭にあることを再度確認するのでは、「おどろかす」の語義と相反する。帝の歌の内容が左大臣にとって意表をついたものでなければならない。前のフレーズ「例のことなり/01-158」とある通り、ここは「引入の大臣」役への労いの場面であり、公事としての礼である。従って、帝の歌い出し「いとけなきはつもとゆひに長き世を」と聞いて、大臣が予期したのは、若宮の元服ないしは娘の婚儀に対する公的な祝(ほ)き歌であった。しかし、予期に反して帝が歌に籠めたのは、大臣個人ないしは大臣家にとっての私的感情であった。公的なものの中に私的なものを籠める趣向におどろかされたのである。「(心)はへ」の本義は(心が)守備範囲から越境すること。もっとも公的なものの中に私的感情を入れ込むことはこの帝のお家芸である。ここからは深読みにすぎるかも知れないが、帝という公的存在が私的な部分を見せることは、ひとえにその者を信頼した証である。左大臣は東宮でなく一世源氏となる若宮を選んだその選択に対して、帝は私的に賛成することを言外に表明したのである。そして私的応援の誓いの品として左大臣には特別の品が与えられるのだ/01-161。そこまで読めば、この一文だけでも緊張感のあるドラマが展開されていることがわかるだろう。

桐壺 注釈 第10章19

いときなき 01-159

「いとけなし」に同じ。幼い。

語りの対象&構造型

対象:光源氏葵の上になりかわって左大臣

御盃のついでに》A
お杯を賜るついでに、


いときなき初元結ひに・ 長き世を 契る心は  結びこめつや》B・C
いたいけな宮が初めて髪を結ぶ元結には末長い寿ぎの気持ちに娘との末長いえにしの願いをこめたであろうの


御心ばへありて おどろかさせたまふ》D
元結の礼に結婚の祝福のご趣向もあって大臣をはっとおさせになる。

分岐型・中断型・分配型:A<(B<Cφ*C<)D:A<D、B<C、*C<D

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

情報の階層&係り受け

構文:は結びこめつや/二次φおどろかさせたまふ/二次

御盃のついで
 @いときなき初元結ひ 長き世 契る 〈心〉は 結びこめつや @
〈御心ばへ〉ありて 〈[帝]〉おどろかさせたまふ

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

係り受け&主語述語

「御盃のついでに」→「御心ばへありて」→「おどろかさせたまふ」


「初元結ひ」「結び」:縁語


「元」「こめ」:縁語


「長き世を契る」:後見役として一生見守る約束する意味と、娘を嫁がせる意味とがある

附録

助詞の識別

御盃ついで いときなき初元結ひ 長き世 契る心 結びこめ  御心ばへあり おどろかさたまふ

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の識別

盃のついでに いときなき初元結ひに 長き世を 契る心は 結びこめつ や 心ばへありて おどろかさ たまふ

尊敬語 謙譲語 丁寧語