結びつる心も深き 160 ★☆☆

2020-09-1401 桐壺01章~10章★☆☆:語義の洗い直しから01 桐壺01章~10章,04 公的生活/出世・祝賀・行事,07 予言約束・予知神託・名付・夢,08 物語の構造/歌

桐壺 原文 かな書き 現代語訳 第10章20

 結びつる心も深き元結ひに 濃き紫の色し褪せずは
と奏して 長橋より下りて 舞踏したまふ

 むすび/つる/こころ/も/ふかき/もとゆひ/に こき/むらさき/の/いろ/し/あせ/ずは
と/そうし/て ながはし/より/おり/て ぶたふ/し/たまふ

結びつけたこちらの気持ちは深いものの元結の濃い紫色が褪せなければよいのですが、と奏上して、長橋から庭に下りてお礼の拝舞をなされる。

解釈の決め手

濃き紫の色し褪せずは:不吉な兆し

祝いの席で、なぜ色あせることを想定したのか不思議である。ただ、この歌の予見は現実のものとなるのだから、作者の意図した歌であるはずだ。左大臣が光源氏に結びつけた元結の紐の色は紫であり、この歌と結びつく。しかし、紫は物語では「ゆかりの色」とされ、桐壺更衣、藤壺の宮、紫の上などに共通の色調であり、光源氏はこれを求めてやまない(今風に言えば、ある種のフェロモンか)。左大臣家にとっては残念ながら、葵の上には「紫のゆかり」の要素はないのである。
いま不思議としたが、これは登場人物の意図せぬ発言が、後に現実となってゆくという洋の東西を問わず悲劇に共通な手法で、幾度となく源氏物語の中で繰り返される手法である。言葉から事柄へ「(言=事)構造」と先にも名付け(/01-030と/01-031)たもので、今後も注意を喚起したい。

桐壺 注釈 第10章20

長橋 01-160

清涼殿から紫宸殿に渡る長い廊下。

語りの対象&構造型

対象:左大臣娘である葵の上の心情代理光源氏との縁

結びつる 心も深き 元結ひに・濃き紫の色し褪せずは》A・B
結びつけたこちらの気持ちは深いものの元結の濃い紫色が褪せなければよいのですが、


と奏して 長橋より下りて舞踏したまふ》C
と奏上して、長橋から庭に下りてお礼の拝舞をなされる。

直列型:(A<B<)C:A<B<C

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

情報の階層&係り受け

構文:に…の…し褪せずは/三次φと奏して…より下りて舞踏したまふ/一次

  結びつる 〈心〉も深き元結ひ 濃き紫の〈色〉し褪せずは  〈[左大臣]〉と奏して 長橋より下りて 舞踏したまふ

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

係り受け&主語述語

「元結ひ」「紫」:縁語


「褪せずは」の後ろに「と願ひつつ」などが省略されている。

附録

助詞の識別

結びつる深き元結ひ 濃き紫褪せ  奏し 長橋より下り 舞踏したまふ

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

敬語の識別

結びつる心も深き元結ひに 濃き紫の色し褪せず は と奏して 長橋より下りて 舞踏したまふ

尊敬語 謙譲語 丁寧語