こよなう心寄せきこ 桐壺09章13

2021-04-18

原文 読み 意味

こよなう心寄せきこえたまへれば 弘徽殿の女御 またこの宮とも御仲そばそばしきゆゑ うち添へて もとよりの憎さも立ち出でて ものしと思したり

01139/難易度:★☆☆

こよなう/こころ-よせ/きこエ/たまへ/れ/ば こうきでん-の-にようご また/この/みや/と/も/おほむ-なか/そばそばしき/ゆゑ うち-そへ/て もとより/の/にくさ/も/たち-いで/て ものし/と/おぼし/たり

若宮があまりに藤壺の宮に心をお寄せになるので、弘徽殿の女御は、若君同様この藤壺の宮とも疎遠であったため、元もとあった亡き方への憎しみも蘇り、不快だとお思いになる。

文構造&係り受け

主語述語と大構造

  • と思したり 四次元構造

〈[光源氏]〉こよなう心寄せきこえたまへれ 〈弘徽殿の女御〉またこの宮とも御仲そばそばしきゆゑ うち添へて もとよりの〈憎さ〉も立ち出でて ものしと思したり

助詞と係り受け

こよなう心寄せきこえたまへれば 弘徽殿の女御 またこの宮とも御仲そばそばしきゆゑ うち添へて もとよりの憎さも立ち出でて ものしと思したり

「心寄せきこえたまへれば」→「弘徽殿の女御…と思したり」

「またこの宮とも御仲そばそばしきゆゑ」:語り手の理由説明


「うち添へて」→「ものしと思したり」


「もとよりの憎さも立ち出でて」:語り手による追加説明

こよなう心寄せきこえたまへ 弘徽殿女御 またこ御仲そばそばしきゆゑ うち添へ もとより憎さ立ち出で ものし思したり

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

助動詞の識別:れ たり

  • :存続・り・已然形
  • たり:存続・たり・終止形
敬語の区別:きこゆ たまふ 御 思す

こよなう心寄せきこえたまへれ ば 弘徽殿の女御 またこの宮と も仲そばそばしきゆゑ うち添へて もとより の憎さも立ち出でて ものしと思したり

尊敬語 謙譲語 丁寧語

古語探訪

こよなう 01139

他との程度に格段の差があること。

心寄せ 01139

好意を寄せること。自動詞「心寄す」の連用形。

この宮とも 01139

若君のみならずこの藤壺の宮とも。

そばそばしき 01139

かどばっている。とげとげしている。

うち添へて 01139

光源氏と藤壺の宮二人一緒に。通例「(藤壺の宮と仲が悪いの)に加えて」と解釈するが、「も立ち出でて」と意味が重複する。次の文が、光源氏と藤壺の宮を並べて提示するので、「ものし」の対象も二人「うち添へて」と取るのがよい。

もとよりの憎さ 01139

生前の桐壺更衣に対して抱いていた憎しみ。

ものし 01139

「もの」に対する感覚。

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