月も入りぬ雲の上も 桐壺07章18
目次
原文 読み 意味
月も入りぬ
雲の上も涙にくるる秋の月いかですむらむ浅茅生の宿
01098/難易度:☆☆☆
つき/も/いり/ぬ
くも/の/うへ/も/なみだ/に/くるる/あき/の/つき/いかで/すむ/らむ/あさぢふ/の/やど
月も沈んだ。
《雲の上といわれる宮中からさえ涙で見えない美しい秋の月 どうして澄んで見えようか 草深い里では涙にかき濡れさぞ住みづらかろう》
文構造&係り受け
主語述語と大構造
- も入りぬ 一次元構造|秋の月 二次元構造|浅茅生の宿 二次元構造
〈月〉も入りぬ | 〈雲の上〉も涙にくるる秋の月 | いかですむらむ浅茅生の宿
助詞と係り受け
月も入りぬ 雲の上も涙にくるる秋の月 いかですむらむ 浅茅生の宿
「雲の上も涙にくるる秋の月いかですむらむ浅茅生の宿」:母君の返書中の歌「荒き風ふせぎし蔭の枯れしより小萩がうへぞ静心なき/01086」に対する返歌。
「雲の上も涙にくるる秋の月」「いかですむらむ浅茅生の宿」:対の関係
月も入りぬ 雲の上も涙にくるる秋の月 いかですむらむ 浅茅生の宿
助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
助動詞の識別:ぬ らむ
- ぬ:完了・ぬ・終止形
- らむ:現在推量・らむ・終止形
敬語の区別:φ
月も入りぬ 雲の上も涙にくるる秋の月 いかですむらむ 浅茅生の宿
尊敬語 謙譲語 丁寧語
古語探訪
すむ 01098:静心なきの歌の返歌
「澄む/晴れる)と「住む/暮らす)の掛詞。「静心なき」に対する応答になっている。娘を失って(母を失って)気が動顛するのも仕方ないでしょうとの答え。もちろん、帝を非難している裏の意味に対しては無視。おそらく、命婦の代詠であろう。
雲の上 01098
雲上(うんしゃう、うんじゃう)、即ち、宮中。
浅茅生の宿 01098
桐壺更衣の母君の里。もちろん光の君のことを案じて思いやるのである。