夕月夜のをかしきほ 桐壺05章02
原文 読み 意味
夕月夜のをかしきほどに 出だし立てさせたまひて やがて眺めおはします
01051/難易度:☆☆☆
ゆふづくよ/の/をかしき/ほど/に いだしたて/させ/たまひ/て やがて/ながめ/おはします
夕月が夜空に美しく昇った頃に使者をお立てになり、そのまま月をぼんやりと眺めておいでで。
文構造&係り受け
主語述語と大構造
- に出だし立てさせたまひて…眺めおはします 二次元構造
〈[帝]〉夕月夜のをかしきほどに 出だし立てさせたまひて やがて眺めおはします
助詞と係り受け
夕月夜のをかしきほどに 出だし立てさせたまひて やがて眺めおはします
- をかしきほどに→出だし立てさせたまふ
- 出だし立てさせたまひて→眺めおはします
/01050文は内裏の外、/01051は内裏の内、命婦を使者に立てた同じ内容の描写だが、命婦の視点と帝の視点の二つに分けて描く。ふたつの視点は時間軸が同時並行している点に注意。
夕月夜のをかしきほどに 出だし立てさせたまひて やがて眺めおはします
助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
助動詞の識別:させ
- させ:尊敬・さす・連用形/「させたまふ」:最高敬語
敬語の区別:させたまふ おはします
夕月夜のをかしきほどに 出だし立てさせたまひて やがて眺めおはします
尊敬語 謙譲語 丁寧語
古語探訪
夕月夜 01051:何月何日?
野分は二百十日、二百二十日の異称がある通り、立春から数えて、二百十日目、二百二十日目頃に吹く台風(秋雨前線による疾風)とされる。年によって違うが、陰暦で二百十日は九月一日頃、二百二十日は九月十日頃とする。陰暦一日は無月だからこの設定にあわない。十日なら夕方に月が出るので、だいたいそのあたりと思ってよい。野分により空気の汚れは吹き飛ばされ、一年でも月が大きくなっているので(八月十五夜からおよそ一月後)、月が殊の外美しかったことが想像される。
眺め 01051:月の魔力
月を眺めることだが、中古文で眺めとは、ぼんやりと物思いにふけることをいうが、この場合は少し特殊。陰の気が増えすぎるためか、月を長く直視することはタブーとされていた。ここでも、桐壺更衣を思いながら月を眺めながているうちに、月の光を浴びすぎ、幻影を見てしまう。
出し立つ
出発させる。使役の意味であるから、「出だし立てさせたまひ」の「させ」は使役にはならない。「させたまふ」は最高敬語である。