宮の御腹は蔵人少将 桐壺10章32
原文 読み 意味
宮の御腹は 蔵人少将にて いと若うをかしきを 右大臣の御仲はいと好からねど え見過ぐしたまはで かしづきたまふ四の君にあはせたまへり 劣らずもてかしづきたるは あらまほしき御あはひどもになむ
01172/難易度:★☆☆
みや/の/おほむ-はら/は くらうど-の-せうしやう/にて いと/わかう/をかしき/を みぎ-の-おとど/の/おほむ-なか/は/いと/よから/ね/ど え/み-すぐし/たまは/で かしづき/たまふ/し-の-きみ/に/あはせ/たまへ/り おとら/ず/もて-かしづき/たる/は あらまほしき/おほむ-あはひ-ども/に/なむ
母宮との間には蔵人の少将の位にとてもお若く見目よいお方がいらして、右大臣は家同士の御仲こそ良くはなかったが婿がねとしてお見過しにならず大切にお育てになった四の君を娶(めあ)わせておられ、源氏を慈しまれておられる左大臣にも劣らず婿がねの少将を慈しみなられるお姿は、ともに理想的な舅と婿の関係でした。
文構造&係り受け
主語述語と大構造
- にあはせたまへり 三次元構造|は…御あはひどもになむ 三次元構造
宮の〈御腹〉は 蔵人少将にて いと若うをかしきを 〈右大臣〉の〈御仲〉はいと好からねど え見過ぐしたまはで かしづきたまふ四の君にあはせたまへり|劣らずもてかしづきたる〈[の]〉は あらまほしき御あはひどもになむ
助詞と係り受け
宮の御腹は 蔵人少将にて いと若うをかしきを 右大臣の御仲はいと好からねど え見過ぐしたまはで かしづきたまふ四の君にあはせたまへり 劣らずもてかしづきたるは あらまほしき御あはひどもになむ
「右大臣の御仲はいと好からねどえ見過ぐしたまはで」:「いと好からねど」に対する主語は「右大臣の御仲」、「え見過ぐしたまはで」に対する主語は「右大臣」。「AのB」がAとBに分かれて後続の述語に対する主語になる構文を懸垂構文といって欧文では非文法とされるが、和文は頻出する。
「蔵人少将にていと若うをかしきを」→「え見過ぐしたまはで」→「あはせたまへり」
「右大臣の…劣らずもてかしづきたる」:主述の関係(AのB連体形)
「御仲はいと好からねど」:挿入句
「劣らずもてかしづきたるは、あらまほしき御あはひどもになむ」:挿入句(語り手の付け足しと感想)
宮の御腹は 蔵人少将にて いと若うをかしきを 右大臣の御仲はいと好からねど え見過ぐしたまはで かしづきたまふ四の君にあはせたまへり 劣らずもてかしづきたるは あらまほしき御あはひどもになむ
助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
助動詞の識別:に ね り ず たる に
- に:断定・なり・連用形
- ね:打消・ず・已然形
- り:完了・り・終止形
- ず:打消・ず・連用形
- たる:存続・たり・連体形
- に:断定・なり・連用形
敬語の区別:御 御 たまふ たまふ たまふ 御
宮の御腹は 蔵人少将にて いと若うをかしきを 右大臣の御仲はいと好からねど え見過ぐしたまはで かしづきたまふ四の君にあはせたまへり 劣らずもてかしづきたるは あらまほしき御あはひどもになむ
尊敬語 謙譲語 丁寧語
古語探訪
御あはひども 01172:左大臣家と婿・右大臣家と婿
「あはひ」は間柄。それに「ども」がつき複数ある。左大臣が光源氏を大切にすることに劣らず、右大臣が左大臣の息子である蔵人少将を大切にする、その関係性がどちらも「あらまほしき」である。
あはせ 01172
結婚させる。
劣らずもてかしづきたる 01172
右大臣の主体にもかかわらず、尊敬語が使用されていない。後の「御あはひ」に吸収され、御が敬語としての役割をしていると考えられる。