帝はたましてえ忍び 桐壺10章11
目次
原文 読み 意味
帝はた ましてえ忍びあへたまはず 思し紛るる折もありつる昔のこと とりかへし悲しく思さる
01151/難易度:☆☆☆
みかど/はた まして/え/しのび-あへ/たまは/ず おぼし-まぎるる/をり/も/あり/つる/むかし/の/こと とりかへし/かなしく/おぼさ/る
帝は帝でまして仕舞いまでこらえ切れず、紛れるべくもないあの方の死を藤壺の宮のご入内で取り紛れた昔日をまざまざと蘇らせてお悲しみになった。
文構造&係り受け
主語述語と大構造
- とりかへし…思さる 三次元構造
〈帝〉はた ましてえ忍びあへたまはず 思し紛るる〈折〉もありつる昔のこと とりかへし悲しく思さる
助詞と係り受け
帝はた ましてえ忍びあへたまはず 思し紛るる折もありつる昔のこと とりかへし悲しく思さる
「はた」→「悲しく思さる」
「ましてえ忍びあへたまはず」:中止法/「とりかへし悲しく思さる」にかけてもよい。
帝はた ましてえ忍びあへたまはず 思し紛るる折もありつる昔のこと とりかへし悲しく思さる
助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
助動詞の識別:ず つる る
- ず:打消・ず・連用形
- つる:完了・つ・連体形
- る:自発・る・終止形
敬語の区別:たまふ 思す 思す
帝はた ましてえ忍びあへたまはず 思し紛るる折もありつる昔のこと とりかへし悲しく思さる
尊敬語 謙譲語 丁寧語
古語探訪
はた 01151
折しも。AとBが同時であることをいう。「皆人涙落としたまふ/01150」を受けて、同じ時に帝もまた。同時性の「また」。
まして 01151
「皆人涙落としたまふ/01150」に対して、帝は「まして」。
思し紛るる折もありつる昔のこととりかへし悲しく思さる 01151
藤壺の宮の参内により、「思し紛るとはなけれどおのづから御心移ろひ(お気持ちが紛れるというのでもないけれどおのずと御心がお移りになり)/01135」状態になっていた。藤壺の宮の参内により更衣を喪った悲しみが紛れてきたことを認め、桐壺更衣の死を今に取り返し悲しまれる。