輦車の宣旨などのた 桐壺03章06
原文 読み 意味
輦車の宣旨などのたまはせても また入らせたまひて さらにえ許させたまはず
01029/難易度:☆☆☆
てぐるま/の/せんじ/など/のたまはせ/て/も また/いら/せ/たまひ/て さらに/え/ゆるさ/せ/たまは/ず
輦車の宣旨などご発令になってもまた曹司にお入りになって、それ以上はいっかなお許しにならない。
文構造&係り受け
主語述語と大構造
- のたまはせても…入らせたまひて…え許させたまはず 一次元構造
〈[帝]〉輦車の宣旨などのたまはせても また入らせたまひて さらにえ許させたまはず
助詞と係り受け
輦車の宣旨などのたまはせても また入らせたまひて さらにえ許させたまはず
- 輦車の宣旨などのたまはせても→(また入らせたまひて→さらにえ許させたまはず(→…とのはたます+を/01030)
のたまはせても→え許させたまはず
「入らせたまひて」:「せ」を使役と読むことも可能であるが、「入らせたまひてはさらにえ許させたはまず」の本文もあり、そうなると「せ」を使役に読むことができない。さらに「え許させたはまず」は連用法で、「とのたまはする(を)/01030」に掛けて読むべきだから、使役と読むより、「桐壺の曹司にお入りになって」のように状況描写として読む方がテキストに深みが出る。
輦車の宣旨などのたまはせても また入らせたまひて さらにえ許させたまはず
助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
助動詞の識別:せ せ ず
- せ:尊敬・す・連用形/「せたまふ」:最高敬語
- せ:尊敬・す・連用形/「せたまふ」:最高敬語
- ず:打消・ず・連用形→のたまはする(を)/01030
敬語の区別:のたまはす せたまふ せたまふ
輦車の宣旨などのたまはせて も また入らせたまひて さらにえ許させたまはず
尊敬語 謙譲語 丁寧語
- のたまはす:のたまふ+す/「のたまふ」単独より敬意が高い
古語探訪
さらにえ許させたまはず 01029
それ以上は決してお許しにならなかった。「さらに」はここでも肯定での用法の意味を残す。「その年の夏御息所はかなき心地にわづらひてまかでなむとしたまふを暇さらに許させたまはず/01024」も同じ用法。そちらで解説した。具体的には、輦車はいつでも出発できるように準備させたものの、帝は桐壺更衣の上局にお入りになり、更衣が出て行かれるのを許さなかった。
輦車の宣旨 01029
車輪がついた手押しの車で、内裏を取り巻く二重の塀の外郭にある中重(なかのえ)の門内で用いる。その宣旨が出るのは、更衣の階級では破格である。