このごろ明け暮れ御 桐壺07章03
〈テキスト〉を紡ぐ〈語り〉の技法
同格「の」の導出 01083
「長恨歌の御絵」という連体格「の」を同格「の」に見立てることで、当該箇所を導出してみよう。
同格「の」の基本形:「AのD連体形」(長恨歌の 伊勢貫之に詠ませたまへる)
「の」は同格だから「AのB、D連体形B」と同じ名詞を代入でき
変形一:「AのB D連体形B」(長恨歌の御絵 伊勢貫之に詠ませたまへる御絵)
非文法的なので、後ろの名詞は省略する
変形二:「AのB D連体形」(長恨歌の御絵 伊勢貫之に詠ませたまへる)
「亭子院/描く/せたまふ」という情報を、「D連体形」と並列の形で補えば、当該箇所ができあがる。
最終形:「長恨歌の御絵 亭子院の描かせたまひて 伊勢貫之に詠ませたまへる」
耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉
語りの対象:帝/亭子院/桐壺更衣
反復型:A,AB→C:A=B、A→C
《このごろ明け暮れ御覧ずる長恨歌の御絵》 A
このごろ明け暮れにご覧になるのは長恨歌の絵屏風で、
《亭子院の描かせたまひて 伊勢貫之に詠ませたまへる》B
それは亭子院(宇多法王)が絵師に描かせ、伊勢や貫之に歌を詠ませになったもので、
《大和言の葉をも 唐土の詩をも ただその筋をぞ枕言にせさせたまふ》C
和歌でも漢詩でも決まってあの方の思い出に引きつけて何度も何度もお詠みになるのでした。
- 〈直列型〉→:修飾 #:倒置
- 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
- 〈中断型〉//:挿入 |:文終止・中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの言換えX ,AB:Aの同格B
- 〈分配型〉A→B*A→C
A→B:AはBに係る
Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
※係り受けは主述関係を含む
※直列型は、全型共通のため単独使用に限った