朝夕の言種に翼をな 桐壺07章14

2021-04-18

原文 読み 意味

朝夕の言種に 翼をならべ 枝を交はさむ と契らせたまひしに かなはざりける命のほどぞ 尽きせず恨めしき

01094/難易度:☆☆☆

あさゆふ/の/こと-ぐさ/に はね/を/ならべ えだ/を/かはさ/む と/ちぎら/せ/たまひ/し/に かなは/ざり/ける/いのち/の/ほど/ぞ つきせ/ず/うらめし/き

朝な夕な口癖のように、翼をならべ枝を交し合おうと、比翼連理を約束なされたが、かなわなかった命のほどが尽きせず恨めしい。

文構造&係り受け

主語述語と大構造

  • ぞ…恨めしき 四次元構造

〈[桐壺更衣]〉朝夕の言種 翼をならべ 枝を交はさむ と契らせたまひし かなはざりける命のほど 〈[帝]〉尽きせず恨めしき

助詞と係り受け

朝夕の言種に 翼をならべ 枝を交はさむ と契らせたまひしに かなはざりける命のほどぞ 尽きせず恨めしき

「契らせたまひしに」→「恨めしき」

朝夕言種 翼ならべ 枝交はさ 契らたまひ かなはざりけるほど 尽きせ恨めしき

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

助動詞の識別:む せ し ざり ける ず

  • :意思・む・終止形
  • :尊敬・す・連用形
  • :過去・き・連体形
  • ざり:打消・ず・連用形
  • ける:呼び起こし・けり・連体形
  • :打消・ず・連用形
敬語の区別:せたまふ

朝夕の言種に 翼をならべ 枝を交はさむ と契らせたまひし に かなはざり ける命のほどぞ 尽きせず恨めしき

尊敬語 謙譲語 丁寧語

古語探訪

かなはざりける命のほど 01094:病気か呪殺か

桐壺更衣の歌と言葉「いかまほしきは命なりけりいとかく思ひたまへましかば/01031」を受ける。帝と桐壺更衣の悲恋は、源氏物語の表現からも玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋と重なり合う部分は多い。しかし、明らかに重ならない部分もある。それは、楊貴妃は玄宗皇帝の目の前で臣下の手で殺される。天地が尽きても、その恨みは尽きないと長恨歌の最終詩句に表現され、最も印象深い表現となっている。それに対して帝は恨みを感じている様子が描かれていない。更衣の死が病気であり、寿命ということになれば、誰を恨むこともできない。しかし、そうでない風であることも示唆されている。この点をどうとらえるか、源氏物語全体の読みに関わる問題であろう。

翼をならべ枝を交はさむ 01094

長恨歌の詩句「在天願作比翼鳥在地願為連理枝」を受ける。比翼鳥は雌雄の鳥の翼がくっついた架空の鳥、連理枝は二本の木の枝がひとつにつながった架空の枝、ともに二度と離れないたとえ。

契らせたまひし 01094

長恨歌の詩句「詞中有誓両心知る(詞の中に誓いあり両心知る)」を受ける。その誓いが比翼連理である。「せたまひ」は文中敬語。主体は桐壺更衣。

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