月は入り方の空清う 桐壺06章11

2021-04-18

原文 読み 意味

月は入り方の 空清う澄みわたれるに 風いと涼しくなりて 草むらの虫の声ごゑもよほし顔なるも いと立ち離れにくき草のもとなり

01075/難易度:☆☆☆

つき/は/いりがた/の そら/きよう/すみ-わたれ/る/に かぜ/いと/すずしく/なり/て くさむら/の/むし/の/こゑごゑ/もよほし-がほ/なる/も いと/たち/はなれ/にくき/くさ/の/もと/なり

月は入り方で空は清く澄みわたる時刻に、風はたいそう涼しくなって、叢の虫の鳴き音までが涙を誘う感じがするのも、何とも立ち去りがたい草の宿である。

文構造&係り受け

主語述語と大構造

  • 草のもとなり 三次元構造

〈月〉は入り方 〈空〉清う澄みわたれる 〈風〉いと涼しくなり 草むらの〈虫の声ごゑ〉もよほし顔なる いと立ち離れにくき草のもとなり

助詞と係り受け

月は入り方の 空清う澄みわたれるに 風いと涼しくなりて 草むらの虫の声ごゑもよほし顔なるも いと立ち離れにくき草のもとなり

「いと立ち離れにくき草のもとなり」は「この草のもとはいと立ち離れにくきなり」の倒置。「空」「風」は風雅に満ちた里であり、入り方の月は間もなく明るくなるので、もう少し待って帰ってもよいとの意味。こうした状況が語られることで次の歌が生きてくる。

「月は入り方の空清う澄みわたれる(時刻)」(A「同格」のB連体形):後ろに時刻、刻限などの語が省略されている。なお、「月は入り方に」の異文も存在し、「月は入り方にあり」などの意味となる。


「月は…わたれるに」:状況説明


「風いと涼しくなりて」「草むらの虫の声ごゑもよほし顔なる」:並列関係(本文が「月は入り方に」であれば、「月」「空」「風」「虫の声」が並列となる)→「も」

入り方 空清う澄みわたれ 風いと涼しくなり 草むら声ごゑもよほし顔なる いと立ち離れにくき草もとなり

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

助動詞の識別:る なり

  • :存続・り・連体形
  • なり:断定・なり・終止形
敬語の区別:φ

月は入り方の 空清う澄みわたれる に 風いと涼しくなりて 草むらの虫の声ごゑもよほし顔なるも いと立ち離れにくき草のもとなり

尊敬語 謙譲語 丁寧語

古語探訪

もよほし顔 01075:涙を誘う擬人法

声の比喩。聴く者の涙を誘う。以下の二首の歌「鈴虫の声の限りを尽くしても長き夜あかずふる涙かな/01076」「いとどしく虫の音しげき浅茅生に露置き添ふる雲の上人/01077」にひびいてくる。

草のもと 01075

母君の里の言い換え。

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