何事かあらむとも思 桐壺04章02
〈テキスト〉を紡ぐ〈語り〉の技法
分岐その五 01037
「ましてあはれに言ふかひなし」の対象は、母が亡くなった事情もわからず、父帝が泣き濡れておられるのを不思議に御覧になっている幼い光源氏の様子だから、「あやしと見たてまつりたまへるを」の「を」は格助詞。その様を「言ふかひなし」とつながる。従って、「よろしきことにだにかかる別れの悲しからぬはなきわざなるを」が挿入句で分岐となっている。このように挿入句は本文と独立したフレーズなので糊代なしに投げ込まれるのが特徴である。
耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉
語りの対象:光源氏/光源氏付きの女房/主上(帝)/語り手の思い入れ
分岐型・中断型:A→B+C→D→/E→/F:A→B+C→D→F、E
《何事かあらむとも思したらず》 A
何が起ころうとしているのかもお分かりでなく、
《さぶらふ人びとの泣きまどひ・主上も御涙のひまなく流れおはしますを・あやしと見たてまつりたまへるを》B・C・D
側仕えの人々が泣きまどう姿や帝が涙の干る間もなく泣いておられご様子を理解もならず見守っておいでのご様子を、
《よろしきことにだにかかる別れの悲しからぬはなきわざなるを》E
栄転などよい理由であっても母を亡くした父子が離れ離れになるのは悲しい重大事であるのに、
《ましてあはれに言ふかひなし》 F
まして東宮資格を失いかねない里下がりとあっては哀れで言い表す言葉が見つかりませんでした。
- 〈直列型〉→:修飾 #:倒置
- 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
- 〈中断型〉//:挿入 |:文終止・中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの言換えX ,AB:Aの同格B
- 〈分配型〉A→B*A→C
A→B:AはBに係る
Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
※係り受けは主述関係を含む
※直列型は、全型共通のため単独使用に限った