年ごろ常の篤しさに 桐壺03章02

2021-04-18

原文 読み 意味

年ごろ常の篤しさになりたまへれば 御目馴れてなほしばしこころみよとのみのたまはするに 日々に重りたまひて ただ五六日のほどにいと弱うなれば 母君泣く泣く奏してまかでさせたてまつりたまふ

01025/難易度:★☆☆

としごろ/つね/の/あづしさ/に/なり/たまへ/れ/ば おほむ-め/なれ/て/なほ/しばし/こころみ/よ/と/のみ/のたまはする/に ひび/に/おもり/たまひ/て ただ/いつ-か/むゆ-か/の/ほど/に/いと/よわう/なれ/ば ははぎみ/なくなく/そうし/て/まかで/させ/たてまつり/たまふ

何年来ご不調が常のご様子でいらっしゃったために、見慣れておいでの帝は、もうしばらく様子をみよとだけお命じになられるが、病態は日に日に悪化し、わずか五六日のうちにひどく衰弱してしまわれたので、母君が泣く泣く帝に奏上し、退出なされるようにしておあげになりました。

文構造&係り受け

主語述語と大構造

  • ば…奏してまかでさせたてまつりたまふ 四次元構造

〈[御息所]〉年ごろ常の篤しさになりたまへれ 〈[帝]〉〈御目〉馴れてなほしばしこころみよのみのたまはする 〈[御息所]〉日々に重りたまひて ただ五六日のほどいと弱うなれ 〈母君〉泣く泣く奏してまかでさせたてまつりたまふ

助詞と係り受け

年ごろ常の篤しさになりたまへれば 御目馴れて 「なほしばしこころみよ」のみのたまはするに 日々に重りたまひて ただ五六日のほどにいと弱うなれば 母君泣く泣く奏してまかでさせたてまつりたまふ

  • 年ごろ常の篤しさになりたまへれ御目馴る+→「なほしばしこころみよ」(直接話法)のみのたまはす+→日々に重りたまひて・ただ五六日のほどにいと弱うなる/並列+→母君泣く泣く奏してまかでさせたてまつりたまふ

年ごろ常篤しさなりたまへ 御目馴れなほしばしこころみよのみのたまはする 日々重りたまひ ただ五六日ほどいと弱うなれ 母君泣く泣く奏しまかでさせたてまつりたまふ

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

助動詞の識別:れ させ

  • :存続・り・已然形
  • させ:使役・さす・連用形
敬語の区別:たまふ 御 のたまはす たまふ 奏す まかづ たてまつる たまふ

年ごろ常の篤しさになりたまへれ ば 目馴れてなほしばしこころみよと のみのたまはするに 日々に重りたまひて ただ五六日のほどにいと弱うなれば 母君泣く泣く奏しまかでさせたてまつりたまふ

尊敬語 謙譲語 丁寧語

  • のたまはす:のたまふ+す/「のたまふ」単独より敬意が高い

古語探訪

奏してまかでさせたてまつりたまふ 01025

「動詞A+て+動詞B」では主体が変わらないのが一般的である。従って「奏し」たのが母君であれば、「まかでさせ」た主体も母君と読むのが自然である。「まかでさせ」た行為に対して、「たてまつり」は客体の更衣に、「たまふ」は主体の母君に、敬意を及ぼす。意味上、「まかでさせ」る権限をもつのは帝のみであるが、地の文で「たてまつり」という客体敬意はなじまない。「奏する」と「まかでさせ」の主体を変えるなら、「奏するに、まかでさせたまふ」「奏したまへば、まかでさせたまふ」などとなる。

年ごろ 01025

この何年来。

常の篤しさ 01025

病気が慢性化していること。

なほ 01025

これまで同様、なおもう少し。桐壺更衣の死の予感、あるいは更衣自身さえ気づいていない運命の急転換(呪いによる不自然死)と、帝の認識にズレがあることからドラマ性が生じる。

ただ五六日のほどにいと弱うなれば 01025

桐壺更衣の母の言葉「横様なるやうにてつひにかくなりはべりぬれば//01070」、藤壺の宮の母の言葉「桐壺の更衣のあらはにはかなくもてなされにし例もゆゆしう/01129」から、呪詛などによる不自然死が想定される。

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