それにつけても世の 桐壺02章16
〈テキスト〉を紡ぐ〈語り〉の技法
連用中止法の公式:新たな主語を立てる
連用中止法は新たな主語が立てられる場合によく起こる。
「S1+V1 S2+V2」で「S1+V1」「S2+V2」が並列関係にある時(すなわち複文の時)に「V1」は中止法になる。ただし、並列であっても、他の語「X」(体言・用言・助詞・助動詞など)に係って行く場合は中止法としない(「S1+V1 S2+V2/並列→X」)。
なお、この文の主語は明示的でないが「世」「世の人」と考えられ、次文の主語は「ものの心知りたまふ人」である。
耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉
語りの対象:世(世の人々、後宮の女性や諸大臣たち)/光源氏
直列型:A→B:A→B
《それにつけても世の誹りのみ多かれど》A
そうした帝のなされようにつけても世間では逆順のそしりばかりが聞かれましたが、
《この御子のおよすげもておはする御容貌心ばへ ありがたくめづらしきまで見えたまふを え嫉みあへたまはず》 B
この御子のご成育あそばされてゆくお顔立ちや趣味のよさは、たぐい稀れで賞賛せずにはおれないようにいらっしゃるのを、誰も憎み切ることはおできになれず、
- 〈直列型〉→:修飾 #:倒置
- 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
- 〈中断型〉//:挿入 |:文終止・中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの言換えX ,AB:Aの同格B
- 〈分配型〉A→B*A→C
A→B:AはBに係る
Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
※係り受けは主述関係を含む
※直列型は、全型共通のため単独使用に限った