この御子三つになり 桐壺02章15
原文 読み 意味
この御子三つになりたまふ年 御袴着のこと 一の宮のたてまつりしに劣らず 内蔵寮納殿の物を尽くしていみじうせさせたまふ
01021/難易度:☆☆☆
この/みこ/み-つ/に/なり/たまふ/とし おほむ-はかまぎ/の/こと/いち-の-みや/の/たてまつり/し/に/おとら/ず くらづかさ/をさめどの/の/もの/を/つくし/て/いみじう/せ/させ/たまふ
この御子が三才におなりの年、御袴着の儀式は、第一皇子がなさったものに劣らず内蔵寮(くらづかさ)や納殿(おさめどの)の財貨を尽くして、盛大に催されました。
文構造&係り受け
主語述語と大構造
- を尽くして…せさせたまふ 三次元構造
この〈御子〉三つになりたまふ年 御袴着のこと 〈[帝]〉一の宮のたてまつりしに劣らず 内蔵寮納殿の物を尽くしていみじうせさせたまふ
助詞と係り受け
この御子三つになりたまふ年 御袴着のこと 一の宮のたてまつりしに劣らず 内蔵寮納殿の物を尽くしていみじうせさせたまふ
- この御子三つになりたまふ年→(御袴着のこと→(一の宮のたてまつりしに劣らず→内蔵寮納殿の物を尽くしていみじうせさせたまふ)):「て」は背景描写。「一の宮のたてまつりしに」:A「主格」のB連体形。同格説では「御袴着のこと」を補うが、「御袴着のこと」を後ろから修飾していると考える方がわかりやすい。
「一の宮のたてまつりしに」:A「主格」のB連体形。「し」の後ろに「御袴着のこと」を補う。国文法では同格とするが、関係代名詞の非制限(叙述)用法と同じ構造。後置修飾と考える方がわかりやすいだろう。
この御子三つになりたまふ年 御袴着のこと 一の宮のたてまつりしに劣らず 内蔵寮納殿の物を尽くしていみじうせさせたまふ
助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
助動詞の識別:し ず させ
- し:過去・き・連体形
- ず:打消・ず・連用形→尽くして→せさせたまふ/ず→せさせたまふ、も可
- させ:尊敬・さす・連用形/「させたまふ」:最高敬語
敬語の区別:御 たまふ 御 たてまつる させたまふ
この御子三つになりたまふ年 御袴着のこと 一の宮のたてまつりしに劣らず 内蔵寮納殿の物を尽くしていみじうせさせたまふ
尊敬語 謙譲語 丁寧語
古語探訪
御袴着 01021
三歳から七歳の間に行われるもので、初めて袴をつける儀式。これ以降、少年としての扱いを受ける。すなわち、これまでは父帝の夫人の部屋に自由に入ることができたが、それができなくなる。
たてまつり 01021
着るの尊敬語。謙譲語ではない。
内蔵寮 01021
内裏の北にある財宝や貢物を納めた所。
納殿 01021
宣陽殿にある歴代天皇の御物を納めた所。これらの財宝を袴着に用いることは、帝の子として当然であるが、第一皇子と差がないことに問題がある。
いみじう 01021
「いみじ」は本来は「忌む」ことに関わり、穢れを意味し、派生的には心理的な恐れを伴うような事態に対して並大抵でないことを表す。ただ、連用形では多く、単に程度の甚だしさを言う場合が多い。
耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉
語りの対象:光源氏/一の宮(第一皇子)/帝
分岐型:A+B→C→D:A+B→C→D
《この御子三つになりたまふ年・御袴着のこと》A・B
この御子が三才におなりの年、御袴着の儀式は、
《一の宮のたてまつりしに劣らず・内蔵寮納殿の物を尽くして いみじうせさせたまふ》 C・D
第一皇子がなさったものに劣らず内蔵寮(くらづかさ)や納殿(おさめどの)の財貨を尽くして、盛大に催されました。