またある時にはえ避 桐壺02章12

2021-04-18

原文 読み 意味

またある時には え避らぬ馬道の戸を鎖しこめ こなたかなた心を合はせて はしたなめわづらはせたまふ時も多かり

01018/難易度:★☆☆

また/ある/とき/に/は え/さらぬ/めだう/の/と/を/さし-こめ こなた-かなた/こころ/を/あはせ/て はしたなめ/わづらはせ/たまふ/とき/も/おほかり

またある時には、御前へ上がる際避けては通れない馬道の戸を、両側から締め立て、あちらとこちらで示し合せて立ち往生させることも度々でした。

文構造&係り受け

主語述語と大構造

  • も多かり 二次元構造

またある時には 〈[他の女御]〉え避らぬ馬道の戸を鎖しこめ こなたかなた心を合はせて はしたなめわづらはせたまふ〈時〉も多かり

助詞と係り受け

またある時には え避らぬ馬道の戸を鎖しこめ こなたかなた心を合はせて はしたなめわづらはせたまふ時も多かり

  • またある時には→え避らぬ馬道の戸を鎖しこめ・こなたかなた心を合はす/並列+はしたなめわづらはす/並列+たまふ時も多かり

またある時にはえ避らぬ馬道の戸を鎖しこめこなたかなた心を合はせて はしたなめわづらはせたまふ時も多かり:前文「あまりうちしきる折々は 打橋渡殿のここかしこの道にあやしきわざをしつつ御送り迎への人の衣の裾堪へがたくまさなきこともあり/01017」と対の表現。


またある時には:「参う上りたまふにもあまりうちしきる折々/01017」に対して「また」。

またある時 え避ら馬道鎖しこめ こなたかなた心合はせ はしたなめわづらはたまふ時多かり

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

助動詞の識別:ぬ せ

  • :打消・ず・連体形
  • :使役・す・連用形/「せたまふ」:使役+尊敬
敬語の区別:たまふ

またある時には え避らぬ馬道の戸を鎖しこめ こなたかなた心を合はせて はしたなめわづらはせたまふ時も多かり

尊敬語 謙譲語 丁寧語

古語探訪

馬道 01018:難産

殿舎の中央を貫く板敷きの廊下で、その両端には戸があるのが普通。行くことも戻ることもできないように通せんぼして、帝のもとに行かせない直接行動をしたという意味。これも難産や死産を狙った呪詛であろう。「女の道」参照。

え避らぬ 01018

帝のもとへ行くのに避けて通れない。

はしたなめ 01018

「はしたなむ」の連用形。「はした」な思いを味合わせる。帝のお召しなので引き下がれないし、かと言って前にも進めない状態が「はした」。進むことも下がることもできない塞がった状態。

せたまふ 01018

更衣に味合わせるの意味。使役+尊敬。

多かり 01018

和文系の文章では「多かり」が通常の終止形、「多し」は漢文系の文章で用いる。形容詞の「多し」だけは補助活用が助動詞と接続せず、本活用として使われる。「多くあり」の縮約と考えてもよい。

〈テキスト〉〈語り〉〈文脈〉の背景

女の道 01018

馬道は女道と音が通じる。妊娠分娩を阻害し、難産のすえ母子ともに危うくさせる呪いが込められている。単なる通せんぼでは児戯に等しい。藤壺の出産時でさえ、「弘徽殿などのうけはしげにのたまふ(弘徽殿めが神仏に願って呪っている)」と聞いて、ここで死んでは物笑いになるのと気力をふりしぼって出産にこぎつける。光源氏の正妻である葵の上は、賀茂祭での車争いから物の怪に襲われ、難産の末、出産間もなく亡くなってしまう。これらよりずっと格下の桐壺に対する憎悪や呪いは、葵の上や藤壺に対する恨みの比ではなかったのではないか。

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