光る君といふ名は高 桐壺10章43

2021-04-18

原文 読み 意味

光る君といふ名は 高麗人のめできこえてつけたてまつりける とぞ言ひ伝へたるとなむ

01183/難易度:☆☆☆

ひかる-きみ/と/いふ/な/は こまうど/の/めで/きこエ/て/つけ/たてまつり/ける と/ぞ/いひつたへ/たる/と/なむ

光の君という名は、高麗人が賛嘆申し上げておつけ申しあげたのだと言い伝えられている。

文構造&係り受け

主語述語と大構造

  • となむ 五次元構造

光る君といふ 〈高麗人〉のめできこえてつけたてまつりける とぞ言ひ伝へたるとなむ

助詞と係り受け

光る君といふ名は 高麗人のめできこえてつけたてまつりける とぞ言ひ伝へたるとなむ

光る君いふ名 高麗人めできこえつけたてまつりける 言ひ伝へたるなむ

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

助動詞の識別:ける たる

  • ける:呼び起こし・けり・連体形(準体言、「名」の省略)
  • たる:存続・たり・連体形(「ぞ」の結び)
敬語の区別:きこゆ たてまつる

光る君といふ名は 高麗人のめできこえてつけたてまつりける と ぞ言ひ伝へたる と なむ

尊敬語 謙譲語 丁寧語

古語探訪

光る君 01183:光を発する人

「世にたぐひなしと見たてまつりたまひ名高うおはする宮の御容貌にもなほ匂はしさはたとへむ方なくうつくしげなるを世の人光る君と聞こゆ藤壺ならびたまひて御おぼえもとりどりなればかかやく日の宮と聞こゆ/01140」とあった。そのとき、光源氏と藤壺は「にほひ=光」で共通し、光源氏の次世代にも「にほひ」は受け継がれるが、「にほひ=香」にランクが下がると注した。光源氏にしても薰や匂の宮にしても体から匂いを発散したとする。物語には明記されていないが、匂いに加えて、光源氏や藤壺は実際に光り輝くように見えたのだろう。

となむ 01183:劇中劇

「となむいふ」などの省略。「言い伝え」とのことという、二重の間接表現になっていることに注意。「となむ」が受けるのは直接的には「光る君といふ名は…とぞ言ひ伝へたる」だが、形式的には、「いづれの御時にか…ありけり」で始まる桐壺の帖全体を受けるとも考え得る。物語冒頭から七十余年の後、源氏物語の最後を語り終える語り手の年齢がいくつかは計りかねるが、同じ語り手が桐壺の帖で語られるエピソードを直接見聞きしたとは考えられない。「となむ」の一語はそうした間接体験であることの証左である。

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