内裏にも御けしき賜 桐壺10章14

2021-04-18

原文 読み 意味

内裏にも御けしき賜はらせたまへりければ さらばこの折の後見なかめるを 添ひ臥しにもと もよほさせたまひければ さ思したり

01154/難易度:☆☆☆

うち/に/も/み-けしき/たまはら/せ/たまへ/り/けれ/ば さらば/この/をり/の/うしろみ/なか/める/を そひぶし/に/も/と もよほさ/せ/たまひ/けれ/ば さ/おぼし/たり

帝へもご内諾を賜れるように画策なさっておられ、ならばこの折りの後見もないようだから、添臥にでも、とお促しになったので、その心づもりで今日を迎えた。その心づもりで今日を迎えた。

文構造&係り受け

主語述語と大構造

  • ばさ思したり 三次元構造

〈[左大臣]〉内裏にも御けしき賜はらせたまへりけれ さらばこの折の〈後見〉なかめる 添ひ臥しにもと 〈[帝]〉もよほさせたまひけれ さ思したり

助詞と係り受け

内裏にも御けしき賜はらせたまへりければ さらばこの折の後見なかめるを 添ひ臥しにもと もよほさせたまひければ さ思したり

内裏御けしき賜はらたまへけれ さら後見なかめる 添ひ臥し もよほさたまひけれ さ思したり

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

助動詞の識別:せ り けれ める せ けれ たり

  • :尊敬・す・連用形
  • :完了・り・連用形
  • けれ:呼び起こし・けり・已然形
  • める:推量・めり・連体形
  • :尊敬・す・連用形
  • けれ:呼び起こし・けり・已然形
  • たり:存続・たり・終止形
敬語の区別:御 賜はる せたまふ せたまふ 思す

内裏に もけしき賜はらたまへり けれ ば さらばこの折の後見なかめる を 添ひ臥しに も と もよほさたまひけれ ば さ思したり

尊敬語 謙譲語 丁寧語

古語探訪

内裏にも御けしき賜はらせたまへりけれ 01154

「御けしき」は帝の承諾。「賜はらせたまへ」は「賜う/帝が臣下に与えるの尊敬語」+「る/受身」+「す/使役」+「たまふ/使役を働きかけた者への敬意」。帝から内諾を与えてもらえるように左大臣が働きかけをなさったとの意味。東宮からの入内の希望を断り、光源氏に娘をやるとなると、帝の承諾が必要であろう。確かな後見のいない光源氏を心配していた帝にしても、それは渡りに船であった。光の君を私物として東宮にもまして愛情を注いで来られた帝のご様子を見てきた左大臣にしても、帝の心配を察しとっていたに違いない。両者の思惑は一致していたのである。

この折 01154

光源氏の元服時。右大臣は娘の結婚時期を、光源氏の元服時を狙って、帝に相談したことが知られる。

添ひ臥し 01154

元服の夜に添寝する公卿の娘のこと。

もよほさせたまひ 01154

うながす、気をむける。

さ思したり 01154

左大臣もそう考えて、今日の元服の儀式に至っているとの意味。「たり」は現在まで続くの意味。

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