さるはいといたく世 帚木01章02
目次
原文 読み 意味
さるは いといたく世を憚り まめだちたまひけるほど なよびかにをかしきことはなくて 交野少将には笑はれたまひけむかし
02002/難易度:☆☆☆
さるは いと/いたく/よ/を/はばかり まめだち/たまひ/ける/ほど なよびか/に/をかしき/こと/は/なく/て かたの-の-せうしやう/に/は/わらは/れ/たまひ/けむ/かし
その実はもう、ひどく世間の目を気にかけ、気まじめそうにしていらっしゃるほどといっては、婀娜めいた艶話はなくて、恋の達人交野の少将には笑われておしまいだったでしょう。
文構造&係り受け
主語述語と大構造
- には笑はれたまひけむかし 三次元構造
さるは 〈[光源氏]〉いといたく世を憚り まめだちたまひけるほど なよびかにをかしき〈こと〉はなくて 交野少将には笑はれたまひけむかし
助詞と係り受け
さるは いといたく世を憚り まめだちたまひけるほど なよびかにをかしきことはなくて 交野少将には笑はれたまひけむかし
「さるは」→「(…をかしきことは)なく(て)」
「いといたく世を憚り」「まめだちたまひける」(並列)→「ほど」
「…まめだちたまひけるほど」「なよびかにをかしきことはなく」(並列)→「て」
「なよびかに」「をかしきことは」(並列)→「なくて」
古語探訪
さるは 02002:副詞と接続詞では意味が異なる
接続詞で、前の内容をくつがえす時に用いる。「その実」「実際には」などの意味。前文で、もの言いさがない人が語り伝えたという「忍びたまひける隠ろへごと/02001」に対して、実際にはそんなことはないと切り返してゆく。
いたく 02002
ひどく。
まめだち 02002
まじめな様子。
なよびか 02002
「まめだち」の反対、つやっぽい。
をかしき 02002
興味をひく。
交野少将 02002
散逸した物語の主人公とされており、恋の達人であったことになっている。