常はすこしそばそば 061
帚木 原文 かな書き 現代語訳 第4章15/源氏物語
常はすこしそばそばしく心づきなき人の をりふしにつけて出でばえするやうもありかしなど 隈なきもの言ひも 定めかねていたくうち嘆く
つね/は/すこし/そばそばしく/こころづきなき/ひと/の /をりふし/に/つけ/て/いでばエ/する/やう/も/あり/かし/など くまなき/ものいひ/も さだめかね/て/いたく/うち-なげく
エ:や行の「え」
(左馬頭)普段はすこしすげすげしてて人好きしない女が、何かの折節公の場で才能を発揮することもあるものですしなどと、左馬頭は一点の曇りもないもの言いながら、頭中将は妻選びの要件を定めかねてひどくため息をつく。
前後の文脈および文の背景
話者の変わり目
「ひたふるに子めきて柔らかならむ人/02-060」と対照的な女性。左馬頭に話者が変わったことを表す。
帚木 注釈 第4章15
そばそばしい 02-061
よそよそしい。
心づきなき 02-061
愛情を感じにくい。
出でばえ 02-061
公の場で映える。
隈なきもの言ひ 02-061
先に、頭中将の発言に対しては「隈なげなる気色」とあった。「げ」には似て非なるのニュアンスがある。ここは明快な論説であることを意味する。
定めかねて 02-061
「中将待ちとりてこの品々をわきまへ定め争ふ/02-030」を受ける。
附録:耳からの情報処理(語りの対象 & 構造型)
語りの対象:妻候補/発言者(左馬頭)/頭中将
《常はすこしそばそばしく心づきなき人の・をりふしにつけて出でばえするやうもありかしなど》A・B
普段はすこしすげすげしてて人好きしない女が、何かの折節公の場で才能を発揮することもあるものですしなどと、
《隈なきもの言ひも・定めかねていたくうち嘆く》C・D
左馬頭は一点の曇りもないもの言いながら、頭中将は妻選びの要件を定めかねてひどくため息をつく。
直列型:A<B<C<D:A<B<C<D
A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
※係り受けは主述関係を含む
〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用
大構造(も定めかねて…うち嘆く/五次)& 係り受け
常はすこしそばそばしく心づきなき〈人〉の をりふしにつけて出でばえする〈やう〉もありかしなど 〈[左馬頭]〉隈なきもの言ひも 〈[頭中将]〉定めかねていたくうち嘆く
〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]: 補 /: 挿入 @・@・@・@:分岐
「人のをりふしにつけて出でばえする」:Aの連体形(主格「の」)