いと口惜しくねぢけ 063

2021-01-1102 帚木01章~06章

帚木 原文 かな書き 現代語訳 第5章02

いと口惜しくねぢけがましきおぼえだになくは ただひとへにものまめやかに静かなる心のおもむきならむよるべをぞ つひの頼み所には思ひおくべかりける

いと/くちをしく/ねぢけがましき/おぼエ/だに/なく/は ただ/ひとへ/に/もの-まめやか/に/しづか/なる/こころ/の/おもむき/なら/む/よるべ/を/ぞ つひ/の/たのみ-どころ/に/は/おもひ/おく/べかり/ける

エ:や行の「え」

(頭中将)ひどく後悔するほど性根のねじけた感じさえなければ、ただもう主婦業に誠実でおだやかな性格の女を、生涯の伴侶には決め置くのがよろしいでしょう。

物語の深部を支える重要語句へのアプローチ

ねぢけがましき

性格がねじれていること。頭中将の前言「ただひたふるに子めきて柔らかならむ人/02-059」を左馬頭との議論から否定。積極的基準から消極的基準に変化。

ものまめやか

「常はすこしそばそばしく心づきなき人のをりふしにつけて出でばえするやうもありかし/02-061」とある左馬頭の意見を取り入れたもの。

ここがPoint

交差禁止

「ただ」は前文では述語「よらじ」「言はじ」にかかるので、ここも述語にかかると考えてよさそうであるが、交差禁止の大原則に違反する。Aは意味上Cにかかる。A→C。従って、AからC内の要素は交差が禁じられているので外に出られず、Bは必然的にCにかかることになる。情報の中心もこの文では末尾の「思ひおくべかりける」にあるのではなく、「ひとへにものまめやかに静かなる心のおもむきならむよるべ」にあり、「ただ」はここにかけるのが自然なのだ。「ただ…をぞ」で係り結びの強調と呼応していることからもそれが自然だとわかる。

帚木 注釈 第5章02

口惜しく 02-063

期待に反したときの感想。

おぼえ 02-063

評判。

心のおもむき 02-063

性格。

よるべ 02-063

伴侶。

附録:耳からの情報処理(語りの対象 & 構造型)

語りの対象:妻候補発言者(頭中将)

いと口惜しくねぢけがましきおぼえだになくは》A
ひどく後悔するほど性根のねじけた感じさえなければ、


ただ・ひとへにものまめやかに静かなる心のおもむきならむよるべをぞ・つひの頼み所には思ひおくべかりける》B・C・D
ただもう主婦業に誠実でおだやかな性格の女を、生涯の伴侶には決め置くのがよろしいでしょう。

直列型:A<B<C<D:A<B<C<D

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

情報の階層&係り受け

大構造(をぞ…には思ひおくべかりける/五次

〈[男]〉いと口惜しくねぢけがましき〈おぼえ〉だになくは ただひとへにものまめやかに静かなる心のおもむきならむよるべをぞ つひの頼み所には思ひおくべかりける

主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

係り受け&主語述語

「おぼえだになくは」→「ただ…よるべをぞ」→「思ひおくべかりける」:大構造


「ただ」→「よるべをぞ」

2021-01-1102 帚木01章~06章

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