なり上れどももとよ 032

2020-09-20☆☆☆:特別な問題点はない02 帚木

帚木 原文 かな書き 現代語訳 第3章01

なり上れどももとよりさるべき筋ならぬは 世人の思へることも さは言へどなほことなり

なりのぼれ/ども /もとより/さるべき/すぢ/なら/ぬ/は よひと/の/おもへ/る/こと/も さは/いへ/ど/なほ/こと/なり

(頭中将)官位が上がっても本来それにふさわしい血筋でない場合は、世間の人の腹の中も、口ではちやほやしようとやはり別なのです。

ここがPoint

誰の発話か

「なり上れども…例ども多かりかし」の発言は、左馬頭とする説と、頭中将とする説がある。この発言は光源氏の質問に対する答えであること、光源氏の揶揄に対して頭中将が憎んだことなど、頭中将説の根拠に挙げられる。当を得ているだろう。他に、「宮仕に出で立ちて思ひがけぬ幸ひとり出づる例」など光源氏の母(桐壺更衣)と受け取れかねない発言は、左馬頭では光源氏の前では行えない。このあたり頭中将の馴れ馴れしさが如実に表われている。

帚木 注釈 第3章01

なり上れども 02-032

具体的には光源氏の発言「直人の上達部などまでなり上り/02-029」を受けているので、貴族でない者が貴族の仲間入りをすることになってもとの意味である。

さるべき筋 02-032

貴族社会の中で出世のできる血筋。

世人の思へること 02-032

世間の評価。

さは言へど 02-032

直訳すれば、そうは言っても。資産ができて、口ではほめられる。

語りの対象&構造型

対象:成り上がり者世の人

なり上れども・もとよりさるべき筋ならぬは》A・B
官位が上がっても本来それにふさわしい血筋でない場合は、


世人の思へることも・ さは言へど・なほことなり》C・D・E
世間の人の腹の中も、口ではちやほやしようとやはり別なのです。

分岐型:A<B<(C<(D<))E:A<B<E、C<E、D<E

 A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む


〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法


〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

情報の階層&係り受け

構文:は…ど…ことなり/三次

〈[娘の父]〉 なり上れ どももとよりさるべき筋ならぬ   〈世人〉の思へる 〈こと〉も  〈[父]〉は言へ なほことなり

主〉述:一朱 二緑 三青 四橙 五紫 六水 [ ]: 補 /: 挿入 :分岐

光源氏の質問「(また)直人の上達部などまでなり上り 我は顔にて家の内を飾り人に劣らじと思へる(そのけぢめをばいかが分くべき)/02-029」に対する頭中将の答え。いくら成り上がり者が人に劣らないと思ってみたところで、世間はそうは思わないし、自分も(頭中将)違うと思う、ということ。

係り受け&主語述語

「さるべき筋ならぬは」→「なほことなり」


「世人の思へる」:「人に劣らじと思へる/02-029」に対応


「さは言へど」:「我は顔にて家の内を飾り人に劣らじ(と思へる)/02-029」を受ける


「なほことなり」:自分では「人に劣らじ」と思っているが世間はそうは思わっていないことを言う


「なほことなり」(「なり」は連用形)→「とりどりにことわりて 中の品にぞ置くべき/02-033」